ケヤキの木の特徴|「偽物?」まで生まれるほど、選ばれてきた木

神社の境内や、通りの並木道。

普段の生活の近くにある、見上げるほどの大きな木「ケヤキ」

それだけでなく、和室の座卓や箪笥でも、その名を耳にする。

大きくて、どうやら立派な木らしい——

そのくらいの像はあっても、日本の暮らしのあちこちにこれだけ顔を出しているこの木のことを、案外知りません。

今回は、そんなケヤキが本当はどんな木で、なぜここまで日本人に選ばれ続けてきたのか、その素顔をのぞきにいきます。

目次

まず、あの姿から――ほうきを逆さにした大木

思い浮かべてほしいのは、根元から立ち上がった幹が、途中からふわりと左右へ枝を広げていく、あの形です。

下のほうに枝が少なく、上で大きく開く。

たとえるなら、ほうきを逆さに立てたような姿。

ケヤキと言われてぱっと浮かぶシルエットは、だいたいこれではないでしょうか。

↑ケヤキの樹形

ほうき型になるのには、わけがある

ケヤキは日当たりを好む、いわゆる陽樹です。

若い木は日当たりのよい場所でないと育たず、育った木も強い光を求めて、できるだけ高く伸びようとします。

すると、下のほうの枝には日が当たらなくなる。

日陰になった下枝は枯れ落ち、残るのは光の届く上の枝ばかり。

こうして、根元はすっきり、上だけ大きく開いた「ほうきを逆さにした」樹形ができあがります。

見慣れたあの形は、光を求めた末のかたちだったのですね。

ただ下枝が日陰で枯れ上がること自体は、ケヤキに限った話ではありません。

ケヤキが目を引くのは、その整い方。

この樹形の美しさは日本の木の中でもトップクラスとされ、公園や街路樹に多く植えられてきました。

↑ケヤキ並木

1500年を生きる巨木もある|東根の大ケヤキ

ケヤキは成長が早く、寿命が長い木です。

各地に巨木が多く、天然記念物やご神木として祀られています。

「○○のケヤキ」と名のつく大ケヤキは、幹まわり5メートル以上のもので全国に800本以上あるといいます。

神社の境内であれほど大きな顔をしているのも、なるほどと思えてきます。

同じように巨木になり、ご神木として祀られる木に、クスノキがあります。

こちらは常緑で、西日本の寺社に多い。

樹冠がゆったりと広がり、一本で立つとこんもりとした姿になります。

真上に伸びて上で開くケヤキと、ゆったりふくらむクスノキ。

そういった区別をしてもいいかもしれませんね。

そして「ケヤキの極み」のような一本が、山形県の東根市にあります。

「東根の大ケヤキ」と呼ばれ、推定される樹齢はなんと1500年以上。

幹のまわりは目通りで16メートル、高さは28メートルにもなり、昭和32年に国の特別天然記念物に指定されました。

南北朝時代、1347年ごろに築かれた東根城の中に植えられていたものだ、という言い伝えも残っています。

その城は1661年に取り壊され、跡地には神社が建ち、周りは畑になりました。

そしていま、この木は東根小学校の校庭に立っています。

城が建ち、城が消え、小学校ができても、この木は歴史を眺めるようにずっとそこにいたわけです。

なんだか感慨深いものです。

さてこれほど大きく、これほど長く生きる木は、いざ切って材にしたとき、どんな顔を見せるのか。

そこが次に気になってきますね。

↑東根の大ケヤキ

切ってわかる素顔――強くて、木目が際立つ

立派なのは、姿だけではありませんでした。

強くて長持ち|社寺の柱になる

ケヤキの材は、まず強い。

強度が大きく、耐久性にも優れ、そのうえ木目が美しい。

この点で、広葉樹の中では最高級の良材とされ、建築に、家具に、彫刻に、使えるところすべてと言いたくなるほど使われてきました。

まず、柱です。

柱というのはある一定の長さが必要で、まっすぐ伸びる針葉樹の方が向いています。

そのなかでケヤキは、広葉樹にはめずらしく柱にも使われてきたのです。

特にケヤキの柱といえば、社寺建築。

なんと京都の清水寺では、あの舞台を支える柱がケヤキです。

社寺に選ばれてきたのは、耐朽性や耐湿性、保存性が高いから。

雨風や湿気に耐え、長い年月、建物を支え続けてきたのですね。

箪笥や座卓の名前で知っていた木が、じつは建物の骨にまでなれる。

こういったところにも、ケヤキが一目置かれてきた理由があるのかもしれません。

↑清水寺

木目が際立つわけ|環孔材と玉杢

もうひとつ、ケヤキの顔といえば、くっきりした木目。

木の中には、水を吸い上げるための細い管──道管が通っています。

ケヤキは「環孔材」と呼ばれる種類で、大きな道管が年輪のきわに沿ってぐるりと連なります。

この大きな道管の並びが、はっきりとした木目の線になって浮かび上がるのです。

色も目を引きます。

中心の心材はオレンジ色、外側の辺材は淡い黄色で、境目がはっきり分かれています。

磨けば、美しい光沢も出ます。

そして、ときに玉杢や牡丹杢と呼ばれる、泡が湧いたような不思議な模様が現れる材があります。

こういった繊細な美しさが、ケヤキが彫刻や伝統工芸品に選ばれてきた理由だったのですね。

ちなみに音の世界にもケヤキはいます。

和太鼓のあの胴にはケヤキが使われることが多く、これもこの木目と艶を買われてのことです。

↑ケヤキの木目

珍重されすぎて、偽物まで生まれた

漆を塗ればケヤキに化ける|模擬材という文化

ここまで来ると、面白いことが起きます。

ケヤキの「偽物」が現れるのです。

ちょっと言葉が悪かったですね。

ケヤキそっくりに見える別の木を、ケヤキの「代用品」として迎えるケースが出てきます。

こうした木を模擬材といいます。

センやセンダン、ケンポナシに漆を塗ると、ケヤキによく似た木目と色になるのです。

センは「ニセケヤキ」の別名で呼ばれることもあり、着色して「新欅」「欅調」の名で売られることもあります。

もちろん、センやセンダンが劣った木というわけではありません。

わざわざ似せてでも使いたいと思わせるほど、ケヤキが別格だった。

模擬材が出るのは、本物に値打ちがあるからこそ、でしょう。

実際に、和歌山の国有林では2016年から木目が美しく成長の早いセンダンを、ケヤキの代わりに育てているそうです。

2年で4メートルを超えた苗もあり、15年から20年で切り出せる見込みだといいます。

↑センダンの木

最後に、この木の名前の話をひとつ。

古い時代、この木は「槻(つき)」と呼ばれました。

「強き木(つよき)」が縮まった名だといわれます。

やがて「けやき」になった由来には、「けやけし」という古い言葉があります。

意味は、際立って優れている、ずば抜けて美しい。

強く、際立つ木。

名前そのものが、この木の素顔を言い当てていたのですね。

まとめ

ほうきを逆さにした姿で天を突き、千年を生きる。

切れば強く、長持ちし、くっきりした木目を見せる。

柱に、太鼓に、社寺に選ばれ、いまも代役が探されている。

そんなケヤキの素顔を順にたどると、どれも「けやけし」――際立って優れている、の一語に重なってくる。

次に街角や神社で、あのほうき型の大木を見上げるとき、その名に込められた一語を、枝の広がりの向こうに重ねてもらえたら幸いです。

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この記事を書いた人

ユカワニ
ユカワニ

木が大好きな一級建築士。トリとイノシシと一緒に木の学びをお伝え。

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