
虫にやられた木──
そんな“言い回し”を聞いたことがあるかもしれません。
実はそれ、“虫害(ちゅうがい)”とか“蟻害(ぎがい)”という、ちゃんとした名前があります。
どちらも「虫によって木が傷んだり、壊れたりすること」を意味します。
その実態は、虫が木を魅力的な“すみか”にしたり、栄養素にしていたりするわけです。
今回は、そんな木にまつわる虫害や蟻害についてです。
どんな虫がいて、どんな風に木と関わっているのか──
そういった“虫害”と“蟻害”の世界を見ていこうと思います。




「ちゅうがい」「ぎがい」ってカッコいい名前だね!



そんないい良いじゃないよ。どちらかというと、ものものしい響きだよ。



できれば、立ち会いたくないシーンだナ、、、
虫害と蟻害、そして海の虫たち
木を傷める虫の被害。
それは木材の世界では“虫害”と”蟻害”という2つに分けられます。
“虫害”は、ヒラタキクイムシやカミキリムシのように、乾いた木をかじる虫によるもの。
一方、蟻害は、シロアリのような昆虫が、湿った木の中に巣をつくって食べ進む被害をいいます。
どちらも、大顎(おおあご)で木を噛み切っていくという点では同じ。
そして、一度始まれば、目に見えぬうちに木の強度を落としていきます。



ちょっと前に「おしりかじり虫」ってのがブームになったナ



うん!いたいた!おぼえてる!



(、、、それは、どうでもいいかな、、、)
そして木を食べるのは、陸の虫だけではありません。
実は、海の中にも“木を食べる生きもの”がいるのです。
たとえば、フナクイムシやニオガイといった貝の仲間。
木に穴を開け、その中にすみついて、静かに木を崩していきます。
陸、海。どこにも木の天敵となる虫はや生物がいるのです。
次からはそのひとつひとつについて、少しだけ深く見ていきましょう。
まずは木から脱出してくる「ヒラタキクイムシ」です。



海にも木を食べるいきものがいるの?



そうみたい。おそらく人生で一度もみたことないけど。



木はどこに居ても油断できないナ〜
ヒラタキクイムシ|木にひそみ、木から出てくる“虫害”
ふだん何気なく使っている木の家具や床から、ある日突然、虫が出てきたら──
なかなか想像しにくいですし、想像もしたくない光景かと思います。
しかし、それが本当に起こる場合があります。
その虫の名はヒラタキクイムシ。
その小さな虫は、木の中で卵が産まれ、木の中で育ち、成虫になると木の表面に小さな穴をあけて外に出てきます。


↑アフリカヒラタキクイムシ(参照:東京文化財研究所)
そのときに排出されるのが、「フラス」と呼ばれる粉状のもの。
木の削りかすや糞などが混ざった、小さな木屑のような痕跡です。
このフラスが出るということは、すでに木の中で、何匹もの幼虫が成長し、少しずつ、その数が増えているというサインでもあります。



早速ヤバいやつが出てきたナ。ホラー映画一本撮れるゾ



オレ、そんな木いらない、、、



本当だよね。ちょっと“やってられない”よね
ヒラタキクイムシはでんぷんや糖分が好物で、そのため広葉樹の辺材や竹材に卵をうみます。
例えば住宅では、ラワン合板を使ったフローリングの下貼りなどで発生することがあります。
逆に、スギやヒノキといった針葉樹の心材では、ほとんど見られません。
ヒラタキクイムシは、木から出てきたあと、また別の木に移って卵を産み、また木の中で幼虫が育ち、成虫になって──
そんなサイクルを、静かに続けていくのです。


↑ヒラタキクイムシ被害イメージ
そして、もっとやっかいなのは、この虫に対して「これをしておけば大丈夫」という決定的な予防策が、ほとんどないということ。
見た目では分からないまま、木の中に卵や幼虫がひそんでいたら、“手の打ちよう”がありません。
市販品で専用のスプレーなどもありますが、被害が広がってしまったり、自分で対処するのが怖いという場合は、無理せず、専門の業者さんに相談する方が安全かもしれません。



「ヤバい木材引いた!」っていう運ゲーじゃんカ



オ、オレ、運がいいほうだから、オレの家具たちは大丈夫なはずだよね?



メーカーさんとかでも何年も乾燥させてて、そこでチェックしてると思うけどね
シロアリの生態|実はゴキブリ
ヒラタキクイムシについては、初めて聞いたという方もいたかもしれません。
次は、おそらく誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、恐怖の虫「シロアリ」についてです。
繰り返しになりますが、ヒラタキクイムシなどによる被害が“虫害”と呼ばれるのに対して、シロアリによるものは、“蟻害”と呼ばれます。
そして驚きなのが、シロアリ──名前に“アリ”とついていますが、じつはアリの仲間ではありません。
分類学的には、昆虫網ゴキブリ目シロアリ科に属しており、どちらかといえばゴキブリに近い昆虫なのです。
とはいえ、生き方としては、アリにも似ているところもあるようです。
巣をつくり、分業し、仲間と連携して暮らす──
社会性を持つという意味では、生態系のあり方はアリに近い存在だと言えるみたいです。



シロアリはゴキブリだったの?!



いよいよ、キモくなってきたナ〜



ちなみに、シロアリは世界中で数百種、日本国内だけでも十数種いるみたい


↑イエシロアリ
そんなシロアリは、湿った木を好みます。
地中から床下、そして柱や土台へと忍び込んで、静かに木を食べ進めていきます。
しかも、ただ木をかじっているだけではありません。
シロアリは、木の細胞を分解して、きちんと栄養として消化できる虫なのです。
木材の主成分であるセルロースを、自分の酵素や腸内の微生物の力を借りて、食べものとして取り入れてしまう。
人間にはできない“木を食べる力”を持っている──
それがシロアリのすごさです。


↑シロアリに食べられた切り株
お家を守るためのシロアリ対策
シロアリが食べ進んだ木材はその分、“中身”がなくなっていきます。
これが家の柱や土台だった場合、建物全体の安全性にも関わってくる大問題です。
そこで考えるべきは、やはり“シロアリ対策”──
ここではそんな“お家を守るシロアリ対策”を3つご紹介します。
対策1:木材そのものの“選び方”を工夫する
まずは木材の選び方です。
シロアリにも“好き嫌い”があり、たとえばヒノキやヒバ、クリなどの木材には、シロアリが嫌う成分が含まれています。
こうした耐蟻性のある木を、土台などシロアリが接触しやすい場所に使う──
そうすることで、そもそも“シロアリが寄りつきにくい家”になります。
また、そうしたシロアリの嫌いな木材以外でも、
薬剤を加圧注入処理した木材を土台に使うという方法もあります。
これは、あらかじめ木材に防腐・防蟻性能を持つ薬剤を内部までしっかりと浸透させておく処理で、多くの住宅の土台で採用されています。



だからヒノキがいいとか言われるんだナ



うん、こういう意味ではヒバはヒノキの上位互換みたいなイメージだよ
対策2:薬剤による“防蟻処理”と基礎の形状
対策1の薬剤注入の話とも重なりますが、建築中に行う防蟻処理というのがあります。
(これは家を作る際に、専門の業者さんにお願いすることではありますが)
防蟻薬剤を木材や地面に散布していくイメージです。
ちなみに、最近の家はベタ基礎(地面全体をコンクリートで覆う構造)が主流。


↑ベタ基礎
昔のように木の土台が直接土に触れるような布基礎に比べると、物理的に侵入しにくい構造になっています。
それだけでも予防効果は高いのですが、それでも配管まわりなどのわずかなすき間をついて侵入するケースはあります。
だからこそ、薬剤処理の役割は今も変わらず大切。
また「今住んでいる家にシロアリが発生してしまった」場合、その進行状況によって処置は変わりますが、一度健全にしてから防蟻処理を行うというのが順当な流れかと思います。



よくこんな家のこと知ってるね



デマ情報じゃないだろーナ?



一応、一級建築士ですので、、、間違ったことは言ってないよ。また防蟻処理は一回やったら終わりじゃなくて何年かに一回は必要になるよ
↑シロアリ駆除業者さんへのリンク(PR)となります
対策3:湿気のたまりにくい“環境づくり”
シロアリは湿気を好みます。
そのため、こちらも“家づくりの段階”での話となりますが、
・床下の通気をしっかり確保する。
・さらに防湿シートで地面から上がってくる湿気を少なくする
こんなことが効果的になってきます。
ちなみにベタ基礎の家では、地面からの湿気を遮る効果も高まります。



提案なんだガ、イノシシ飼ったらシロアリ食べつくすんじゃないカ?



ナルホド。その辺りどうなの?



ときどき食べることもあるけど、主食じゃないよ。地面の中にいたら分からないし
フナクイムシとニオガイ|海の中で木を食べる
木を食べる虫は、陸の上だけの話ではありません。
実は、海の中にも“木を食べる生きもの”がいます。
その名も、フナクイムシとニオガイ。
名前に「虫」とついていますが、実はどちらも貝の仲間(軟体動物)。
ふにゃふにゃした体を持っていて、木の中に穴をあけて、すっぽり入り込んで暮らします。
そして、ただ住んでいるだけではありません。
体の中にいる小さな細菌の力を借りて、木の成分(セルロース)を分解して、ちゃんと“栄養にして”生きているのです。



じぶんで食べて、じぶんが入れる家にする?



そうらしいよ。“家が食べ物”でもあるわけだね



とんでもない“サバイバル能力”だナ
そしてフナクイムシは、自分が掘った穴の内側に、炭酸カルシウムでできた殻のようなものをまとわせて、まるで“自分専用の通路”みたいに補強します。
そのため、昔の木造船や、港にある木の杭や桟橋などを、中からじわじわと食い荒らしてしまうこと。
普段目にすることはほとんどありませんが、海の中にもまた、木をめぐる生きものの暮らしがあるのです。


↑フナクイムシ被害イメージ
まとめ
木は硬くて、強くて、そして分解されにくい。
だからこそ、家や船、そして桟橋などの“大事な部分”に使われてきました。
でもそんな木がどんどん壊されていくなんて──
虫害、蟻害おそるべし、です。
今回は、そんな「見なくて済むなら見たくない世界」に、あえて目を向けてみました。
しかし、そういうものでも知ることで、いざ向き合わざるを得なくなった時、少しだけ落ち着いていられる気もするのです。



おそるべし!おそるべし!



うん、でもまずは目を背けないでおこうと思う



木の天敵は、人の営みの天敵みたいだナ〜












