
椿と山茶花(サザンカ)が似すぎている──
どちらもビビッドな赤色の花が咲く。
それもどちらも寒い時期に。
またどちらもツヤのある葉をつけている。
本当にこの二つはどうなっているのか?
今回はそんな椿と山茶花(サザンカ)の違いについてです。
実は、この二つ、そっくりなだけでなく、名前まで取り違えて生まれた間柄だったのです。
見分けるなら、まず足もと

この二つ、似ているのも、そのはず。
サザンカと椿は、同じツバキ属、学名でいうカメリア(Camellia)の、ごく近い仲間です。
サザンカが Camellia sasanqua、椿が Camellia japonica。同じ名字を持つ、兄弟のようなものなのですね。
一見まったく一緒ですが、それでも見分けるところはあります。
迷ったら、まず足もとを見てください。
椿は、咲き終わると花の頭ごと、ぽとりと落ちます。地面に、花の形のまま転がっている。
サザンカは、花びらが一枚、また一枚と散ります。木の下に、花びらが敷きつめられている。
遠目で分からなくても、足もとを見れば見当がつくのです。

↑椿の散花

↑サザンカの散花
花ごと落ちるのには、理由がある
なぜ椿だけ、花ごと落ちるのか。
椿の花は、5枚の花びらと、たくさんのおしべの根もとが、くっついて一つの筒になっています。
花の中心のおしべが茶筅(ちゃせん)のような筒に見えるのは、そのためです。
根もとが一つにつながっているから、散るときも、花びらとおしべが一緒に落ちる。
サザンカのおしべは一本一本が離れていて、花びらもそれぞれ別々についています。だから、一枚ずつ散っていく。
散り方の違いは、花のつくりの違いだったわけです。

↑ツバキのおしべ

↑サザンカのおしべ
花の形と、香りの違い
花そのものにも、違いが出ます。
椿は厚みがあって、半開きの筒のように咲く。サザンカは平たく、薄く開きます。
そして香り。椿はほとんど香りませんが、サザンカは強く香ります。
目の前の一輪なら、いちばん早い決め手かもしれません。
(なお、椿が花ごと落ちることは、古くから「不吉」の噂とも結びついてきました。その話は、椿の木は不吉?の記事で詳しくまとめています)
葉っぱの違い
花のない季節なら、葉を見ます。
椿の葉は5〜12センチと大きめで、ツヤが強く、ふちのギザギザは控えめ。
サザンカの葉は3〜7センチと小ぶりで、ツヤは弱く、ギザギザがはっきり出ます。
咲く時期の違い
咲く時期も、少しずれています。
一般に、サザンカが早く、秋から初冬。椿は遅れて、冬から春。
ただし、時期はかなり重なります。
それには理由があって、庭や生垣に植えられているサザンカには、実は椿とかけ合わせた園芸品種が混じっているからです。
園芸のサザンカは、三つの群に分けられます。もとのサザンカに近いサザンカ群が10〜12月。サザンカと椿をかけ合わせたカンツバキ群が11〜3月、同じくハルサザンカ群が12〜4月。
名前に堂々と「椿」とつく「寒椿(カンツバキ)」も、園芸ではサザンカ側に数えられます。
生垣の花が椿に見えて仕方ないのは、半分ほんとうに椿だから、ということもあるのですね。
ここまでを、表にまとめておきます。
| 椿 | サザンカ | |
|---|---|---|
| 散り方 | 花ごと、ぽとりと落ちる | 花びらが一枚ずつ散る |
| おしべ | 根もとがくっついている(茶筅の形) | 一本一本が離れている |
| 花の形 | 厚みがあり、半開きの筒状 | 平たく、薄く開く |
| 香り | ほとんど無い | 強く香る |
| 葉 | 5〜12センチ、つや強め、ギザギザ控えめ | 3〜7センチ、つや弱め、ギザギザはっきり |
| 咲く時期 | 冬から春 | 秋から初冬(園芸品種は春まで) |

「山茶花」は、もとは椿のことだった
そしてこの兄弟、名前の方も、もっとややこしい。
まず、日本と中国で、同じ字が何を指しているかを見てください。
| 日本での字 | 中国での字 | |
|---|---|---|
| ツバキ | 椿 | 山茶(紅山茶) |
| サザンカ | 山茶花 | 茶梅 |
| チャンチン (センダン科の別の木) | 香椿 | 椿 |
日本でサザンカに使っている「山茶花」は、中国では椿の花のこと。
日本で椿に使っている「椿」は、中国ではまったく別の木のこと。
二つの花とも、日本に来てから、字の意味がずれているのです。
順に見ていきましょう。
「山茶花」は、日本でも最初は椿だった
「山茶」は中国の言葉で、葉がお茶のように飲める、山の木という意味。
椿の仲間を指す名で、その花が「山茶花」です。
サザンカには「茶梅」という別の名前があります。
この「山茶花」という字が日本に入ってきたとき、意味は中国と同じ、椿でした。古い辞書でも「ツバキと呼ばれる木の花」と説明されています。
それが江戸時代に入ると、この字はいつのまにか、椿ではなくサザンカを指すようになりました。
名前が、椿からサザンカへ引っ越したわけです。
読みも「サンザカ」がひっくり返った
引っ越しただけではありません。読みも、途中で入れ替わっています。
「山茶花」を字のとおりに読めば、「サンザカ(サンザクヮ)」。
それがいつしか音がひっくり返り、「サザンカ」になった。
こうした音の入れ替わりは音位転換と呼ばれ、江戸中期ごろから今の読みが定着したとされています。
そして、このひっくり返ったあとの読みが、そのまま世界共通の名前になりました。
学名 Camellia sasanqua の sasanqua は、和名の「サザンカ」。
椿から引っ越してきた字。ひっくり返った読み。そのまま学名になった名前。三段の偶然でできています。
「椿」の字は、中国では別の木
一方の椿。
中国で「椿」といえば、チャンチン(香椿)という、センダン科の落葉樹。
もとをたどると、紀元前3世紀ごろの『荘子』に出てくる「大椿」。
八千年を春とし、八千年を秋とする、桁違いに長生きの伝説の木です。
後の人がその字を香椿に当てた、といいます。
日本では、この「椿」の字を、まったく別のツバキに当てました。
同じ字でも、指す木が海の向こうとこちらで違ったのです。
まとめ
いかがでしたか。見分けるのは、足もと。
花ごと落ちていれば椿、花びらが散り敷いていればサザンカ。
花ごと落ちるのは、花びらとおしべの根もとが一つの筒につながっているから。
そして名前の方も実は紛らわしい歴史を持っていたのですね。
そんな豆知識をもって、赤い花をのぞいてみてください。
きっとしっかりジャッジできるはずです。


