焼杉(やきすぎ)外壁のメリット・デメリット|「焼き方」と「炭の残し方」で変わるメンテナンスの真実

最近ブームなのか、見る機会が多くなった「焼杉外壁」のお家。

自然素材ならではの温かみ。モダンで引き締まった表情。

それをあわせ持つ焼杉は、こだわりの家づくりを目指す方から熱い視線を集めるのも理解できます。

しかし、いざ自分の家に採用しようと調べてみると、少し不思議なことに気がつきます。

ある焼杉メーカーのサイトには「焼杉は数十年間メンテナンス不要」と書かれているのに、別のメーカーのサイトには「定期的な保護塗料の塗り直しが必要」と書かれている。

はて、一体どっちの情報を信じればいいの──

しかし、その答えは、「どっちかが正しくて、どっちかが間違い」というわけではありません。

今回は、そんな焼杉の疑問を、その特徴から紐解いていきたいと思います。

目次

そもそも「焼杉(やきすぎ)」の外壁とは?

焼杉とは、その名の通り「杉板の表面を火で焦がして炭化させた外壁材」のこと。

もしかしたら

「わざわざ木を焼いて外壁にするなんてどうかしてるよ」

そう思われる方もいるかもしれません。

ですが、これには日本の過酷な自然環境と戦ってきた、先人たちの深い知恵が隠されているのです。

それを知るには、焼杉文化が「どんな地域で栄えてきたか」から話をすすめます。

↑焼杉の炭化層

瀬戸内の潮風が生んだ先人の知恵

焼杉の文化は、古くから岡山県や香川県など、瀬戸内海沿岸の地域を中心に発展してきました。

海から吹き付ける潮風が建物に与える影響はとても大きく、「沿岸部の家に使う部材に慎重になる」というのは、“建築をやっている人間あるある”です。

そんな場所で発展した、いわば“潮風の影響をモロに受ける”外壁素材──

つまり、耐久力のために作られた技術だったのです。

そして、その秘密は「炭」にあります。

昔の人は、杉板の表面をあえて焼いて「炭」にすることで、腐食や虫の被害から家を守る方法を編み出したのです。

デザインのために黒くしたのではなく、生き抜くための機能美だったというわけです。

↑海の近くでも使用される焼杉外壁

海外で大ブーム「Shou Sugi Ban」

そんな日本の伝統的なエコ建材である焼杉ですが、実は今、海を渡って世界中でもブームを巻き起こしています。

化学物質を使わずに高い耐久性を誇るサステナブルな素材として、海外の建築家やデザイナーから高く評価され、英語圏でもそのまま「Shou Sugi Ban」という名前で通じるほど。

海外の高級ヴィラなどの外壁に、日本の焼杉が使われている光景は、なんだか誇らしい気持ちになりますね。

さて、このような世界が認める素晴らしい建材である焼杉。

それなのに、なぜ国内のメーカーごとに、耐用年数やメンテナンスの主張が「全く違う」という現象が起きているのでしょうか。

焼杉のメンテナンスを分ける「焼き方」と「仕上げ」の違い

その答えは、「どう焼くか」、そして「炭をどう残すか」という、2つの工程にあります。

現在流通している焼杉は、大きく分けると昔ながらの「三角焼き」と、工場での「機械(バーナー)焼き」の2つの製法に分けられます。

杉板を三角柱に組んで内側からじっくり焼き上げる三角焼きは、時間をかけて強い熱にさらされる分、厚い炭化層をつくりやすい製法です。

一方、バーナーで表面を短時間に焼く機械焼きは、量産や均一な仕上がりに向いている反面、一般的には炭化層が薄くなりやすい傾向があります。

(ただし、焼成時間や温度、炉の方式によっても差が出るため、機械焼きが一律に薄いと言い切れるわけではありません)。

↑三角焼きのイメージ

さらに、こうして生まれた炭化層を「そのまま残すか」「あえて削り落とすか」という仕上げの工程が、もうひとつの分かれ道になります。

焼杉の外壁としての寿命やメンテナンス性は、この「どう焼き、炭をどう残しているか」という2つの工程の組み合わせによって、大きく変わってくることになるのです。

炭をそのまま残す「素焼き(炭付き)」外壁の特徴|メリット・デメリット・経年変化

まずは、厚い炭化層ができやすい昔ながらの三角焼き、あるいは機械焼きの中でも比較的厚めに焼き上げ、それを削らずにそのまま残した「素焼き」のタイプです。

この分厚い炭化層は、まさに本物の鎧。

優れた防虫防腐性を発揮し、潮風のある地域でも外壁材として長く使われてきた実績があります。

そして、その経年変化もまた美しいもの。

年月とともに少しずつ炭が落ち、シルバーグレーへと変わっていく姿は、自然素材ならではの味わいです。

また、もし一部の板がひどく傷んでしまった場合でも、傷んだ部分の木材だけを新しいものに張り替えればOK。

大掛かりな修繕になりにくいという手軽さも持ち合わせています。

デメリットとしては、やはり触れると服が汚れてしまうこと。

また、職人さんの手作業による伝統的な三角焼きを採用した場合は、初期費用が高めになってしまうことでしょうか。

あえて炭を落とす「ブラシ仕上げ・塗装品」外壁の特徴|メリット・デメリット・メンテナンス

一方で、扱いやすさを優先して、工場で表面の炭をブラッシング等である程度落としたタイプもあります。

こちらは手や服が汚れにくく、美しい木目を楽しめるというのが大きなメリット。

ただし、木を守る鎧であった「炭」をあえて削り落としているため、そのまま外壁として雨風にさらされると、色落ちや劣化が進みやすくなってしまいます。

この弱点を補うために現代で広く流通しているのが、フッ素樹脂や浸透系塗料などで保護した「塗装品の焼杉」。

表面を塗料で保護することで、服への汚れ移りを抑えやすくし、初期の美しい黒さと木材の耐久性を長持ちさせることができるイメージです。

ただし、こちらを採用する場合はメンテナンスについても理解が大切。

これらの塗膜は永遠ではないため、定期的なメンテナンスが必要になります。

5〜10年程度で上塗りをすすめる商品もあれば、より長期の耐候性をうたう塗装品もあります。

(実際のメンテナンス時期は、採用する商品の仕様と立地条件に合わせて確認しておくことが大切です。)

そして商品によりけりですが、高性能な保護塗料を施した製品は、最終的な材料費が素焼きの焼杉に近い金額になってしまうケースもあります。

↑経年変化した焼杉外壁

まとめ|焼杉は「炭を残すか、扱いやすさをとるか」

いかがだったでしょうか。

「焼杉」と一言で言っても、「焼き方」そして「仕上げ方」によって全くの別物であることがお分かりいただけたかと思います。

三角焼きという伝統をまとった焼杉外壁に家を委ね、シルバーグレーに退色していく自然のうつろいを楽しむのか。

それとも、定期的な塗装メンテナンスを前提として、現代の技術でコーティングされたスタイリッシュな黒さを保ち続けるのか。

どちらも素敵な家との付き合い方です。

ここまでくると、ライフスタイル論。

それぞれの違いをしっかりと理解したうえで、一番“しっくりくる”焼杉を見つけていただけたら幸いです。

↑風合いが美しい経年変化した焼杉の塀

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この記事を書いた人

ユカワニ
ユカワニ

木が大好きな一級建築士。トリとイノシシと一緒に木の学びをお伝え。

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