
SNSでよくみる、手作りの「ちりめん山椒」や、ツヤツヤの「山椒醤油」を作る動画。
ピリッとした香りが画面越しに漂ってきそうで、なんだかとても美味しそう。
ああいう動画を見ていると、「うちでも山椒を育てて、いつでも新鮮な実や葉っぱを使えたらいいな」なんて考えが頭をよぎります。
でも、いざ育てようと思うと、「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」という噂話も風にのって聞こえてきます。
この記事では、そんな山椒の木にまつわる素朴な疑問や、山椒にまつわる面白いお話までをまとめてみました。
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SNSで話題の山椒|でも「山椒の木」ってそもそもどんな姿?

↑ちりめん山椒
意外と知らない?山椒の木の特徴と「トゲ」の存在
山椒と聞くと、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。
スーパーに並ぶ緑色の実や、ウナギの横に添えられた粉末はよく知られていますが、それがどんな木に実っているのか、パッと思い浮かぶ人は意外と少ないかもしれません。
山椒は、実はミカン科の落葉低木。
ミカンの仲間と聞くと少し驚きますが、葉っぱを揉むと、山椒特有のあのスッと突き抜けるような爽やかな柑橘系の香りがします。
葉は小さな葉がいくつも集まったような形をしていて、縁には細かなギザギザ(鋸歯)があります。
そんな葉っぱそのものは柔らかいのですが、枝の方には鋭いトゲが対になって生えているという、少しワイルドな特徴を持っています。
実際に苗を手に入れて育ててみようという時は、うっかり枝のトゲに触ってケガをしないように気をつけてください。

↑山椒の木の棘
実がなる木とならない木がある?|雌雄異株の話
さて、いざ山椒を育ててみたいと考えた方に、ひとつ大切なことをお伝えします。
人間と同じように、山椒の木にはオスとメスがあるのです。これを「雌雄異株(しゆういしゅ)」と呼びます。
春に小さな黄緑色の花を咲かせるのは同じですが、初夏には料理に使われる青い実をつけ、秋になると赤く熟していくのは基本的にメスの木だけです。
(オスの木は実をつけませんが、春に料理の飾りなどで使われる若葉や花を楽しむことができます)
では、実が欲しいなら「メスの苗木」を1本買えばいいのかというと、実はそう簡単ではありません。
自然界では、確実に実をたくさんつけるために、花粉を運んでくれるオスの木が近くに必要なことが多いのです。
しかも厄介なことに、苗木の段階でオスメスを見分けるのはプロでも至難の業だと言われています。
「えっ、じゃあどうやって買えばいいの?実がならないかもしれないなら買いたくない」と迷ってしまいますね。
実は、そんなお悩みを解決してくれる「ある品種」が存在します。詳しくは、後ほどの「育て方のコツ」のパートでご紹介しますね。

↑山椒の実
「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」って本当?
「植えてはいけない」と言われる理由|トゲの言い伝えと、育てにくさ
「どんな木か分かったし、さっそくお庭に植えてみよう!」
そう思って準備を始めると、ふと「山椒の木は自宅に植えてはいけない」という噂を耳にして、少しドキッとすることがあるかもしれません。
昔から、トゲのある植物は「庭に植えると縁起が悪い」とか、「揉め事が起きる」なんて言われることがありました。風水や迷信として、今でもそういった言葉が残っているようです。
そして、そんなトゲの噂ともう一つ、自宅の敷地に植えたらNGと言われる理由がありました。それが「育てにくさ」です。
山椒の木が突然枯れるのはなぜ?|浅い根と、アゲハ蝶の幼虫
山椒の木は、とてもデリケートな性質を持っています。
根が浅く張るため、夏の乾燥や強い日差しに弱く、かと思えば水はけが悪いとすぐに根腐れを起こしてしまいます。つまり、昨日まで青々としていたのに、環境の変化で突然枯れてしまうことが珍しくないのです。
加えて、山椒は特定の虫(アゲハ蝶の幼虫)の大好物でもあります。気づかないうちに葉っぱが食べ尽くされてしまうこともあります。
昔の人は、大切に育てていた木が突然枯れてしまったり、虫が発生したりする様子を見て、「何か不吉なことの前触れかもしれない」と不安に思ったのでしょう。
決して山椒の木に悪意があるわけではなく、少し環境に敏感で、虫にモテすぎるというだけのことなのです。

↑青虫と山椒の木
山椒の木を枯らさずに育てるコツ
マンションのベランダでもOK!山椒の木を枯らさない鉢植えの育て方
「枯れやすいなら、自分には育てられないかも…」
そう不安になった方もいるかもしれませんが、ご安心ください。デリケートな性質を理解して、ちょっとしたポイントを押さえておけば大丈夫。
お庭に地植えするのが不安な方は、環境をコントロールしやすい「鉢植え」から始めてみるのがおすすめです。
ポイントは、水はけの良い土を選ぶことと、直射日光が当たりすぎない「半日陰」のような風通しの良い場所に置くこと。
山椒の突然の枯れ込みは、水切れや水のやりすぎによる根の傷みが原因になることが多いです。土の表面が乾いたらたっぷりと水をあげて、受け皿に水を溜めっぱなしにしないことだけ覚えておいてください。
喉が渇きやすいけれど、足元がいつまでも水浸しなのは嫌い、という少しワガママな性質なんですね。
また、木が大きくなってきたら、冬の間に邪魔な枝を少し切って風通しを良くしてあげるくらいで、特別に難しい剪定は必要ありません。
要注意!「山椒の木」につきやすい虫(アゲハ蝶の幼虫など)の対策
もう一つだけ気をつけることがあるとすれば、先ほども触れた虫の存在です。
ミカン科の植物である山椒は、アゲハ蝶にとって最高のレストラン。春から秋にかけて、気づくと葉っぱの上に小さな幼虫がいることがあります。
彼らの食欲は驚くほど旺盛で、放っておくと小さな苗木や若木の葉はあっという間に食べ尽くされてしまいます。
見つけ次第、割り箸などで取り除くのが一番の対策です。防虫ネットを張って、蝶が卵を産み付けられないようにするのも効果的ですね。
トゲが少なく1本でも実がなりやすい「朝倉山椒」
さて、最初の「オスメス問題」の答え合わせです。
「実を収穫してちりめん山椒を作りたいけれど、オスメスを見分けるのも2本育てるのも大変そう」という方には、「朝倉山椒(あさくらさんしょう)」という品種がおすすめです。
山椒は基本的にオスメスが必要だとお伝えしましたが、この朝倉山椒は一般的な山椒に比べてトゲが少なく、1本だけでも実がなる(雌雄同株)という、とてもありがたい特徴を持っています。
お手入れ中のケガの心配も減るため、これから始める方にはうってつけです。
ただし、環境や木の状態によって実つきには差が出るため、より安定して収穫したい場合は、販売店で結実性を確認して選ぶと安心です。

↑朝倉山椒の実
もっと山椒の木が好きになる!?山椒にまつわる小話集
すり鉢のお供「すりこぎ」が山椒の木で作られる理由
山椒といえば、外せないアイテムがあります。
それは、すり鉢でゴマなどをすりつぶす時に使う木の棒「すりこぎ」です。
この「すりこぎ」は、山椒の木で作られているものが、古くから高級品として扱われてきました。
でも、なぜ山椒なのでしょうか。
それは、山椒の木には食あたりを防ぐ力があると考えられていたためです。
また、すっているうちに削れた山椒の木の微粉末が料理に混ざることで、体によいという昔ながらの言い伝えがあったようです。ただそれはあくまで、現代の衛生管理とは別の、昔の暮らしの知恵として受け止めるのがよさそうです。
もちろん、木に適度な柔らかさがあってすり鉢を傷めないことや、ゴツゴツとした皮が滑り止めになって手に馴染みやすいという、実用的な理由もしっかりとありました。

↑サンショのすりこぎ棒
昭和の言葉遊び「驚き桃の木山椒の木」の元ネタって?
そして今度は、山椒でよく聞く言葉。
「驚き、桃の木、山椒の木」。
なにかびっくりした時に、ふと口をついて出る言葉遊びです。
由来ははっきりしていませんが、「驚き(おどろき)」の「き」の音に引っ掛けて、「木」がつく言葉をリズミカルに並べたダジャレのようなものです。
昭和の映画やアニメなどでも似たフレーズが使われ、耳に残るリズムとして広く知られるようになりました。
山椒の木には何の責任もないのですが、その語呂の良さだけで、長年「驚き」の代表格として名前を使われ続けているというのは、なんだか少しユーモラスですね。
まとめ|山椒の木を育てて、おうちごはんを格上げしよう!
ここまで、山椒の木の特徴から育て方のコツ、そして少し変わったトリビアまでをご紹介してきました。
「庭に植えてはダメ」という噂の裏には、実はデリケートで虫に好かれすぎるという、少し不器用な木の性質が隠れていました。その性質さえ理解してしまえば、マンションのベランダでも鉢植えで楽しく育てることができます。
自家製の木の芽を豆腐にのせたり、初夏に収穫した青い実でちりめん山椒を作ったり。ほんの少しの手間をかけるだけで、いつもの食卓に極上の香りと彩りが加わります。
ちょっと頑張って、山椒の木のある暮らしにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
おまけ|山椒をくらしに取り入れる
自宅で山椒を育ててみたい
薬味を作る側でも大活躍、山椒のすりこぎ
ご飯のお供としての幅広さ



