
バニラアイスや焼き菓子に入っている、あの黒い粒々。
パッケージで「バニラビーンズ使用」と見かけると、なんだか少し得した気分になります。
でも、あれがどんな姿でなっているのかを思い浮かべようとすると、うまく像を結ばないのではないでしょうか。
太い幹に、あの甘い香りの実がぶら下がっている……そんなイメージを描いてみても、どこかしっくりこない。
今回は、そもそもバニラビーンズが何の植物からとれるのかを、少し辿ってみようと思います。
※この記事は広告PRを含みます






バニラビーンズは「木」ではなかった
さっそくですが、まずは衝撃の事実から。
「バニラの木、バニラの木」と呼ばれたりしますが、バニラは、木ではありません。
正体はラン科のつる植物。
そう、あの華やかなランの仲間なのです。
自分の幹で立つのではなく、そばにある木や支柱に絡みつきながら、上へ上へと伸びていきます。
私たちが料理に使うあの細長いさやは、その花が咲いたあとに結ぶ果実の部分。
木の幹に実がぶら下がっているのではなく、つるの先に細い豆のような果実がなる、というわけです。

↑バニラの木(木ではない)
また面白いのは、その呼び名。
「バニラビーンズ」と、まるで豆のように呼ばれています。
けれど、これはマメ科の豆ではありません。
細長いさやの見た目が豆のさやに似ているだけで、中身はランの果実。
名前にすっかりだまされていた、という方も多いかもしれませんね。
木のように見えて木ではなく、豆のようで豆でもない、なかなか思わせぶりな植物だったのです。

あの甘い香りは、最初はなかった
もうひとつ、意外な事実があります。
収穫したばかりのさやには、あのバニラらしい甘い香りが、ほとんどありません。
畑からもいだそのままでは、青っぽいだけの細いさや。
あの香りは、収穫のあとに作られるものなのです。
摘んださやを、温めたり、寝かせたり。
発酵と乾燥をくり返す「キュアリング」と呼ばれる工程を、何か月もかけて根気よく続けます。
その長い時間のなかで、さやの中にバニリンという香り成分が生まれ、少しずつあの甘い香りをまとっていくとされています。
香りは最初からそこにあったのではなく、人の手と時間をかけて引き出されるものだったわけですね。

↑バニラビーンズ

花はすぐしぼみ、受粉も一筋縄ではいかない
手間がかかるのは、香りづくりだけではありません。
そのおおもと、花が実を結ぶまでの道のりにも、もうひとつの手間が隠れているのです。
バニラの花は、咲いてもごく短い時間でしおれてしまうといわれています。
しかも、受粉がひと苦労。
原産地とされるメキシコあたりには、この花の受粉を助ける虫がいるとされます。
ところが、バニラが世界各地へ運ばれても、その虫まで一緒に旅をしてくれたわけではありません。
虫のいない土地では、花が咲いても実が結ばない。
そこで人が、花ひとつひとつに手作業で受粉させる方法をとることになりました。
この人工授粉の方法を編み出したのは、19世紀、レユニオン島にいた少年だったとされています。
花ひとつひとつの手作業から、何か月ものキュアリングまで。ここまで人の手がかかるからこそ、バニラはサフランに次ぐともいわれる、非常に高価なスパイスとして知られているのです。
小さな花に向き合う細やかな手仕事が、いまの世界中のバニラを支えている。
なんとも味わい深い話ではないでしょうか。

↑バニラの花
まとめ
バニラビーンズの正体を辿ると、いくつもの「意外」が出てきました。
木ではなく、ランのつる植物。豆のようで、豆ではない。
そして、あの甘い香りは最初からあるのではなく、長い手間の末に生まれるもの。
花はすぐにしおれ、受粉さえ人の手を借りている。
身近な甘い香りの裏側に、これだけの物語が隠れていたわけです。
次にバニラの香りに出会ったときは、あの細いさやが遠い土地のつるに揺れている姿を、少しだけ想像してみると面白いかもしれませんね。
5:おまけ|バニラビーンズを改めて味わう
いざ、本物を試してみる



