
最近SNSでよく見るようになった、宝石のような青い種。
(※正確には種ではないのですが、それはのちほど…)
まるでどこかの作家さんが作ったかのような造形美をもつ自然物。
そう「旅人の木(タビビトの木)」です。
この木、青い種だけでも“個性がありすぎる”くらいではありますが、実はその裏側に隠された物語もとても面白いのです。
今回は、青い種だけで終わらない「旅人の木」の生態と物語を、お伝えしていけたらと思います。












SNSで話題!「旅人の木」って一体どんな植物?

旅人の木の故郷はマダガスカル
まずは「旅人の木」、いったいその故郷はどこなのでしょうか。
それは、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国、マダガスカル。
ドリームワークスの映画のタイトルにもなっている、動植物たちの楽園です。
ここは生息する野生動物の約80〜90%がマダガスカルにしかいない固有種だと言われています。
(太古の昔に他の大陸から完全に切り離された島のため、外からライオンなどの大型肉食動物が入ってくることがなく、その結果、本来なら淘汰されてしまうような動物たちが独自の進化を遂げることができたようです。)
それは植物も同様、非常に固有種が多い場所。
「旅人の木」はそんな場所を故郷としている植物なのです。

↑タビビトの木
バナナのような葉を持つ、ゴクラクチョウカ科の植物
では、その全体的なフォルムから。
繊細な青い種からは想像ができない程、ダイナミックに大きな葉を広げる、まるでヤシの木を彷彿とさせる姿です。
ですが、実はヤシの仲間ではありません。
ちょっと近づいて、一枚一枚の葉っぱに注目してみると、バナナの葉によく似ていることが分かります。
そう、バナナと旅人の木は「ショウガ目(もく)」という同じ大きなグループに属する遠い親戚なのです。
細かく分類すると、バナナは「バショウ科」、旅人の木は「ゴクラクチョウカ科」と別々の家族になります。
ちなみに、旅人の木の日本での正式名称は「オウギバショウ(扇芭蕉)」。
「バショウ」という名前がつきながら、「バショウ科」ではないんです。

↑バナナの木
目を疑うほどの鮮やかさ!あの「青い種」の秘密
そして、SNSなどで多くの人の目を釘付けにしているのが、あの鮮烈なコバルトブルー。
まるで絵の具で塗ったかのような色合いですが、もちろん着色ではありません。
種明かしをすると、あの青い部分は種そのものではなく、種を包み込んでいる「仮種皮(かしゅひ)」と呼ばれる薄いコートのような部分なのです。

↑タビビトの木の仮種皮(かしゅひ)
「旅人の木」と呼ばれる都市伝説のような理由
さて、次は名前についてです。
いったいなぜ、この木は「Traveler’s tree(旅人の木)」とネーミングされたのでしょうか?
普通ならば、「Blue Seed Tree(青い種の木)」とか、「False Banana(バナナだまし)」みたいな名前がついても良さそうなものです。
しかし、それこそ日本的すぎる考え方なのかもしれません。
このネーミングにはマダガスカルの自然と関わる面白い言い伝えがあるのです。
旅人の命を救った?|天然の水筒
一つ目の理由は、まるで天然の貯水タンクのような役割から。
大きく広がる葉の根元部分には、雨水が溜まる構造になっています。
そう、ここに名前の由来の物語があります。
【乾燥した大地を歩き続けて喉を渇かせた「旅人たち」が、この木に溜まった水を見つけて命を繋いだ】というものです。
衛生・不衛生は別として、水の少ない道中でこの木を見つけた旅人たちにとっては、まさにオアシスだったのかもしれません。

旅人に方向を示した?|天然のコンパス
二つ目は、この木が天然のコンパスとして機能していたというお話です。
旅人の木の扇状に広がる葉は、太陽の光を全身で効率よく受け止めるため、東西方向を向きやすいとも言われています。
そのため、道なき道を進む旅人たちは、この木のシルエットを見て方角の目安にしていたという説です。
広大な自然の中で、標識の代わりに生えている木──
そう思うとロマンはありますが、にわかには信じがたいのが人情。
たぶん、昔の旅人たちも半信半疑だったのではないでしょうか。

進化の鍵は「マダガスカルの動物たち」
冒頭に、マダガスカルには「固有種の動物たちが多い」というお話をしました。
旅人の木は、その動物たちと同じ世界に住む植物です。
その関係は切っても切り離せません。
たとえば、旅人の木は、マダガスカル固有の動物「キツネザル」と深い関係を持っています。
硬い花をこじ開けられる彼らは、甘い花の蜜を求めてやってきて、その顔や体に花粉をつけて運んでくれる大切なパートナー。
そのようにして受粉がつながり命がまわっているのです。
他の動物たちも同様です。
あの美しい青色で、「美味しそう!」と思わせて種を遠くへ運んでもらう。
植物は自分で動けない代わりに、色を使って動物を惚れさせる。
あのコバルトブルーが、そのためのデザイン力だと思うと、これもまた神秘ではないでしょうか。

↑クロシロエリマキキツネザル
「旅人の木」の花言葉
いろいろと旅人の木の生態や物語について触れてきましたが、実は、この「旅人(タビビト)の木」は贈り物としても縁起の良い植物です。
「何ものも恐れぬ精神」
旅人の木にも花言葉があります。
それは「何ものも恐れぬ精神」という、とても前向きで力強いもの。
太陽に向かって、大きな葉をのびのびと広げる姿を想像すると、この言葉の意味合いも納得できます。
新しい挑戦をする時や、毎日を少しだけタフに生きたい時、良いお守りになってくれそうです。
風水アイテムとしての魅力
また、花言葉だけではありません。
風水の世界でも縁起物として重宝されています。
大きく丸みを帯びた葉は、気持ちを落ち着かせてくれるリラックス効果があると考えられています。
さらに、ここでもあのダイナミックなフォルムが関係してきます。
空へ向かってぐんぐん成長していく姿を、「発展や成功のシンボル」として捉えることができるようです。
自宅に迎える場合|「旅人の木」の育て方
花言葉の縁起も良く、見た目も絵になる旅人の木。
自宅に迎え入れたくなった方もいるのではないでしょうか。
そこで、育て方の簡単なポイントだけ最後にまとめておきます。
まず鉢植えの観葉植物として育てる場合、一番気をつけたいのは温度です。
南国の生まれなので、とにかく寒さが苦手。
日本の冬を越すためには、日当たりの良い暖かい室内に置いてあげる必要があります。
太陽の光が大好きなので、春から秋にかけては土の表面が乾いたらたっぷりとお水をあげて、冬は少し控えめに。
ただ残念なのが、鉢植えサイズでは花が咲かないため、あの青い種を見ることはできないのは理解しておきたいところです。
しかし鮮やかな緑の大きな葉だけでも十分に南国の風を感じさせてくれます。

↑一番奥がタビビトの木
もちろん「やっぱりあの青い種を飾る方がいい」という方はドライフラワーとしてインテリアにするのもいいと思います。
空間にちょっとした異国情緒と知的なアクセントを加えてくれます。

まとめ
旅人の木の逸話と、あの青の理由をかいつまんでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
こういう特殊性は、なにかしらの生存戦略と結びついていることが多いですね。
今回は、「マダガスカルの動物たちを惚れさせる」というものだったわけです。
次にSNSで“この青”をみたとき、マダガスカルの雄大な自然や、そこを歩いた旅人たちの足跡を背景として思い出していただけたら幸いです。



