
「間伐材(かんばつざい)」という言葉。
最近は耳にする機会も増えましたが、同時にこんなイメージを持たれることも少なくないようです。
『間引かれた細くて弱い木だから、タダ同然なんでしょう?』
たしかに言葉の響きから、そう思ってしまうのも無理はありません。
でも、実際のところはどうなのでしょうか?
今回は【くらしにちょっと木をプラス】というテーマの延長として、「間伐材って、本当はどんな木?」という少しの疑問から、日本の森が抱える現状について一緒に覗いてみたいと思います。








間伐材とは?なぜ「過密人工林」が生まれたのか
豊かそうに見えて実は真っ暗な「間伐されない森」
日本の山を思い浮かべたとき、緑豊かで自然あふれる姿を想像する方が多いかもしれません。
例えばこの写真を見てください

「なんだか、しっかり木が生えていて立派な森だね!」
そう思われるかもしれません。
しかし、実際の森の中に入ってみると、木々が異常に密集し、地面に光がまったく届かない鬱蒼(うっそう)とした状態になっている場所がたくさんあります
次の写真も見てください。

「森の綺麗なイメージ!」というよりは、なんだか鬱蒼(うっそう)としているという方が、表現としては適切なように思います。
驚かれるかもしれませんが、ここよりもっと暗い森が広がっているのです。
国産材が使われなくなり、森が放置された歴史的背景
それでは、なんでこの過密(ぎゅうぎゅう詰め)状態ができあがったのか?
発端は、戦後の植林政策です。当時は復興資材として木材が大量に必要とされ、全国で「まずは木を植えよう」と植林が進められました。
しかし、スギやヒノキが木材として使えるようになるまでには40〜50年以上の年月がかかります。
その間に時代は変わり、安価な外国産材の輸入が本格化しました。
山から木を伐り出し運搬するには大きなお金がかかるため、国産の木は売れなくなってしまったのです。
結果として「植えられたけれども放置される」ことになり、手入れの行き届かない過密人工林(かみつじんこうりん)が完成してしまいました。

間伐をしないデメリットと、引き起こされる自然災害
木を伐ることが森を救う?「間伐」が必要な理由
この過密状態を解消するための大切な作業が「間伐(かんばつ)」です。
これにより、森林の成長に合わせて木の一部を伐採し、森全体に日光を行き渡らせます。
一方で間伐を行わず過密なまま放置すると、地面に光が届かない『真っ暗な森』になります。
光が遮られることで下草が生えなくなり、それをエサや住処(すみか)とする動物たちも姿を消し、結果的に森全体の「生物多様性」が失われてしまいます。
さらに、下草がないと土がふかふかにならず、雨水が地下に浸透しにくくなります。
木々もお互いの成長を邪魔し合うため、一本一本がしっかりと根を張ることができません。
この状態が引き起こす一番の恐怖、それが自然災害です。

↑根がむき出しになった木のイメージ
放置された森と土砂災害のリアル
これは決して机上の空論ではありません。
2000年に甚大な被害をもたらした「東海豪雨」。
このとき豊田市周辺(矢作川流域)でも多くの土砂崩れが発生しましたが、その後の調査で、崩れた山の多くが「手入れされずに放置された過密人工林」だったことが分かっています。
根張りが弱く、ふんばりのきかない木々は、豪雨の水を支えきれずに表土ごと一気に崩落してしまったのです。

↑過密人工林からの土砂崩れイメージ
ジオラマで解説|間伐で森が明るくなる
ここまで少し硬いお話が続きましたが、ここでこちらの写真を見てみてください。

これは筆者(ゆかわ)がプロデュースした「間伐できるジオラマ」です。
パッと見ると立派な森に見えますが、よく見ると木々が隙間なく密集しています。
これまでお話ししてきた「放置された過密な森」を視覚的に再現したものです。
イベントなどで、この模型の木をスポンッと抜いて、暗い森に光を入れる「間伐」の疑似体験ができるようになっています。

↑過密で暗い森

↑間伐後の明るい森
こうして間引くことで、森が明るく健康になるイメージ、なんとなく伝わりましたでしょうか。
そして、このとき森を明るくするために抜かれた木こそが「間伐材」なのです。
「間伐材=安くて弱い」は誤解。建材にもなる十分な強度
ここで、冒頭のイメージについて改めて考えてみます。 『細くて弱い木だから、タダ同然』なのでしょうか。
ここまで読んでいただいた方には、これが少し違うということが伝わるかもしれません。
山に入り、木を伐り出し、運び、加工するには、大変な手間とコストがかかっています。決して「タダ」ではありません。
そして「間伐材だから強度が弱い」なんてこともありません。
適切に乾燥・加工されたものは、柱にも、床材にも、家具にも、立派に使えるのです。
まとめ
「国産材を使おう」「間伐材を使おう」と呼びかけられている背景には、こうした日本の森の切実な課題があります。
間伐は単に木をまびく作業ではなく、災害に強い健全な森を作るための「森づくり」そのものだったのです。
そして、そのサイクルを回し続けるには、伐り出された木が私たちの生活の中で使われることが不可欠となります。
森を守るために、何か特別なことをしなければいけないわけではありません。
日々の生活の中で、木のぬくもりを感じられるお気に入りのアイテムを取り入れてみる。
そんな風に、無理なく楽しみながら【くらしにちょっと木をプラス】することが、結果として暗い森に光を当て、生き物たちが息づく災害に強い豊かな山を育てる第一歩に繋がっていきます。



