IKEAやニトリで目にする家具や生活雑貨。
その素材に「ビーチ材(ブナ)」と書かれているのを、見たことがあるかもしれません。
手ざわりもなめらかで、見た目もスッキリとした清潔感。
なのに、値段は大変“お手頃”、安心価格。
それは、逆に「この木は大丈夫なのか?」と心配になってしまうほど。
しかし、その“リーズナブルさ”の裏には、ビーチという木の性質と、技術の進歩という背景があったのです。
今回はそんなビーチ材についてのお話です。








ビーチという樹木の性質|陰樹という生命力

↑ビーチの森
そもそも「ビーチ材」は、ヨーロッパでの呼び名。
日本では「ブナ」として知られ、どちらの地域でも昔から森に広く根ざしてきた広葉樹のひとつです。
この木の面白い特徴のひとつに、「陰樹(いんじゅ)」という性質があります。
その性質は次のようなものです。
他の木々が先に育ってつくった森のなかで、はじめは存在感を抑え、静かに日陰でゆっくり育つ。
しかし、ゆっくりと年を重ねるうちに、だんだんと日光を好むようになり、やがてそ“主役”としてその森を支配していく。
こんな性質から、ときには、まわりの木々をおさえて“ビーチだけの森”にしてしまうほど繁殖力も強いのです。
※もっと詳しく知りたい方へ
ビーチが国土の多くを占めるヨーロッパでは、一時期(19世紀〜20世紀にかけて)成長が早く扱いやすい針葉樹が好まれ、ビーチの森は後回しにされていた時期もありました。
しかし、単一の針葉樹林の弱さや環境への影響が問題視されるようになり、現在ではビーチの植林が見直され、計画的に森のなかへ戻されるようになっています。

↑新緑のブナ
しかし、考え方をくるっと変えてみると面白いことに気づきます。
人間と森の歴史は、木を必要として森をダメにして、、、というのの繰り返し。
その時に“木がもつ生命力”というのは“木の安定供給への素質”そのものになるわけです。
なんだか分かってきましたね。
そうしたビーチの生命力と、人の手によるビーチ林の再構が、ビーチ流通の一因となっているのです。
材としてのビーチ|昔は役立たずの木だった?
さて少し話題を変えて──
ビーチの日本での呼ばれ方「ブナ」という漢字は「橅」と書きます。
見たことありますか?
これは「木にあらず」という意味で、昔の日本では「建材にならない、役に立たない木」と考えられていたようです。

↑ビーチの断面
そう言われた理由は、いくつかの弱点があったからです。
伐採後の変色が早い
乾燥すると暴れやすい(歪みやすい)
腐りやすく保存性が低い
しかし時代は進みました。
短所を抑えられるだけの“乾燥技術”が進歩したのです。
かつての短所が、今では十分にコントロールできるようになり、ビーチ材の本来の長所が見直されるようになったのです。
もともとビーチ(ブナ)は
曲げ加工に強い(曲木家具にぴったり)
均一で滑らかな木目
手ざわりの良さ
といった、家具や小物にとって理想的な特性がそろっています。

↑ビーチの木肌
かつては“使えない木”とまで言われた木が、いまでは私たちの暮らしに自然と溶け込む“定番材”になった──
ここの背景にも、木の力と人の技術の重なりがあったわけです。
ビーチ材の使用品いろいろ|衣食住、全てに使われる幅広さ
こういったビーチ材がどのような商品として活用されているかちょっと覗いてみます。
本当に色々な場面でビーチ材が用いられているのがわかるかと思います。
1:ビーチ材の家具
まずは何と言っても家具でしょう。
曲げに強く、加工もしやすい性質が、やさしい曲線のフォルムをもつ家具を、手の届きやすい価格で楽しませてくれます。
2:ビーチ材のお皿
そして食に周辺においても、活用されています。ビーチ材は加工がしやすく、木目や色味もやわらかいため、まるみのある美しい木の器などにも削り出して使われています。
3:ビーチ材のハンガー
さらには、「衣」のカテゴリーにおいてもビーチ材は広く使われています。
滑らかな木目というのは、服をかける上での大切な特性でもあったわけです。
まとめ|大量にあることは価値が薄いことではない
IKEAやニトリでよく見る“高くないモノ”に使われている木だから──
そんな想いで、木の価値を測ってはダメです。
リーズナブルさの“裏側”にあったのは、
安定供給ができるだけの、“木の生命力”
その短所を克服してきた、“現在の技術力”
この掛け算を生み出すことができたからでした。
そう思えば、この木を見る目も少し変わるのではないでしょうか。
もちろん、ビーチ(ブナ)材だって完璧というわけではありません。
針葉樹に比べれば成長は遅く、腐りやすさへの懸念から建築の構造材にはあまり向きません。
しかし、木の性質に技術が組み合わさり、最適な場所に、最適な素材が届けられる。
その仕組みこそが、とても面白いことのように思えます。


