木が腐る4つの原因と防止裏技|ウッドデッキの長持ち対策にも

繊維質で、しかも硬くて頑丈なはずの木が、気がつけばボロボロに。

そんな写真や映像を、どこかで見たことがあるかもしれません。

もしかしたら、自分の家のウッドデッキや庭の柵も、いつかこんなふうになるのでは?

そう思うと、少し怖くなってきます。

冷蔵庫の中の野菜やお肉じゃあるまいし、あのしっかりした木材が、どうしてあんなふうに腐ってしまうのか。

その原因は、木の細胞そのものを分解してしまう木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)という菌の存在にあります。

オレがふんだだけでボロボロになるのあるぞ

相当腐ってたんだね。その原因は“菌”みたい

“菌”って目に見えないダロ。対処しようがないんじゃないカ〜

なんだかやっかいそうな菌ですね。

しかしこの菌のことを少しでも知っておけば、木が腐る理由や、それを防ぐヒントが見えてくるかもしれません。

今回はそんな“木の腐り”について、考えてみたいと思います。

木が腐る理由漫画①|もくめディア
木が腐る理由漫画②|もくめディア
木が腐る理由漫画③|もくめディア

↑今回参照にした書籍はコチラ

目次

木材腐朽菌とはそもそも何か

木というのは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンといった成分が、 がっちりと組み合わさってできています。

この構造があるからこそ、木はとてもかたく、分解されにくい。

草や野菜とはちがう、いわば“植物のなかの別格”のような存在です。

しかし、そんな木の細胞壁さえも、 じわじわと壊していくものがいます。

それが、木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)と呼ばれる菌たちです。

表面にひっつくだけで細胞壁を分解できないカビとはちがい、 木そのもの──つまり細胞壁そのものを分解できる、 ちょっと特別な力を持っている菌たちなのです。

元気な木はオレの牙でもなかなか削れないぞ

細胞から壊していくって怖いよね

(…もくざいふきゅうきん、って言いにくい名前だナ〜)

木材腐朽菌の写真|白色のきのこ

↑白色のきのこ。これも木材腐朽菌のひとつ

木材腐朽菌に影響を与えるもの

しかし木材腐朽菌も、いつでも木の中で活動できるわけではありません。

彼らが活動するためには、“彼らのとってのちゃんとした環境” が条件となります。

つまり、その環境しだいで「木が長く持つか」「すぐに腐ってしまうか」──大きな差が生まれるのです。

ここでは、そんな木材腐朽菌が活動するための条件を、ひとつずつ見ていくことにします。

①水分(自由水)

まず、木材腐朽菌にとって一番の“スイッチ”になるのが水分です。

木材の中に水分がなければ、どれだけ栄養があっても菌は動きません。

ただし、ここでいう「水分」は、単に“木が濡れている”という意味ではありません。

木の中にある水分には、2つの種類があります。

  • 結合水:木の細胞の壁にしっかりとくっついている水分

  • 自由水:細胞のすき間や中にたまっている、比較的動きやすい水分

このうち、菌の活動に必要なのは「自由水」のほうです。

“自由水”が抜けきって、木の中に結合水だけが残った状態を「繊維飽和点」と呼びますが、木が腐るかどうかは「木材の含水率がこの繊維飽和点を超えているかどうか」がその境界線になるのです。

ややこしいから“濡れるか濡れないか”でいいダロ?

まぁ実際には、そういった感じになるよね。

(…水の中で生きるなんて、菌はすごいな)

しかしやっかいな点がひとつあります。

それは木材腐朽菌は、水分を自分で運んでくる力もあることです。

まわりの湿った場所から、乾いた木の中へと水を引き寄せて、その部分で腐朽を進めていくこともあるのです。

②酸素

つづいて、酸素です。

木材腐朽菌にとって、酸素は欠かせないエネルギー源のひとつ。

わずかでも空気がある場所なら、そこで活動をはじめることができます。

実際、空気中に酸素が1%でも存在すれば、腐朽は進行するといわれています。

逆に言えば、酸素がまったく届かない環境では、木材腐朽菌は活動できません。

たとえば、完全に水に沈めた状態や、土の奥深くのように空気の流れがない場所では、菌の力は封じられます。

酸素シャットダウンさせればいいみたいだよ。面白いね

そんな無理難題言うなよナ〜

水に沈めた状態の木のイメージ

③栄養(窒素)

菌たちも、生きるには “栄養” が必要です。

木材腐朽菌は、自分が代謝しやすい糖やアミノ酸などを相対的に多く含む辺材(木の外周部の部分)が大好きです。

しかし、菌も木材だけを頼りにしていると、その成長はとてもゆっくりになります。

それは、木材には木材腐朽菌に必要な栄養素のひとつ、 “窒素” がごくわずかだからです。

ところが、もし近くに土や落ち葉、すでに腐った木などがあれば、菌はそこから “窒素” や ”ミネラル” を取り込み、一気に動きはじめるのです。

木の置かれる環境に何があるか───

これも“木が腐るかどうか”の大きなカギになるのです。

↑周囲から栄養素がもらいやすい環境

④:温度

木材腐朽菌が好む温度は、菌の種類によってけっこう違いがあります。

24〜32℃くらいがちょうどいい菌もいれば、もっと低い気温で静かに動く菌や、かなりの高温に耐えてしまう菌もいます。

たとえば、0〜5℃でも生育が確認されている菌もいて、南極のような極寒の地で見つかった記録さえあります。

一方で、高温に強い菌だと、長時間なら45℃、短時間なら60〜80℃にも耐えられることもあるそうです。

だから「寒いから菌は動けないだろう」とか、「暑すぎるから菌もバテてるはず」と思っていも、実はそうでもなかったりします。

オレ、最近の夏はもうイヤだ!

それでも40度だからね。もっといけるってすごいね

“冬は腐りにくい”とかないんだナ〜

木の腐りを防ぐには

さて、木材腐朽菌の正体がすこしずつ見えてきたところで、今度はその“動きを止める方法”について考えてみます。

先ほどお話ししたように、木が腐っていくには、水・空気・栄養・温度──そんな“まわりの環境”が条件として必要でした。

ということは、そのうちのどれかを欠けさせることができれば、菌の活動はゆるやかになり、木の腐りを防ぐことができるということです。

では、それらを具体的に見ていきます。

①菌の侵入を防ぐ

まずはじめに“そもそも論”ですが、木の腐りを防ぐうえで、「菌を木の中に入れない」というのは、とても基本的で大切なことです。

たとえば、木材が直接地面や土に触れないようにする。

そして、こちらもポイント。近くにある古い腐朽材は、できるだけ取り除く。

つまり腐ってそうな木材を載せておいたりしないこと。

こうしたことでも、木材腐朽菌の侵入リスクはぐっと下がります。

つまり腐ったヤツらを近寄らせないってことダロ?

そうだけど、表現が悪いよ

オレ、腐った木踏んだけど大丈夫?

②木の水分をおさえる(含水率の管理)

木の中に“自由水”があると、腐朽菌は活動を始めます。

だからこそ、木材を(「繊維飽和点」よりも)乾燥させておくことが、まず大切でした。

でも、それだけでは不十分です。

もうひとつ大切なのが、まわりの環境を整えること。

たとえば、窓のサッシまわりを思い浮かべてみてください。

木材のそばに金属があると、結露からできた水分で、じわじわと水分が供給されてしまうこともあるのです。

つまり、「水に気をつける」とは、木材をよく乾かすことと、まわりの環境にも気を配ること。

その両方がそろって、ようやく “腐らせない体制” ができるのです。

↑サッシの結露

これ、冬によく見るヤツ!

断熱性が高いサッシだと防げるかもね

このフリー素材の写真、ただ霧吹きしただけじゃないカ〜

③酸素を断つ

酸素が送り込まれない環境では、木材腐朽菌は活動できません。

つまり “水の中” や “地中” のような場所では、 酸素がほとんど届かないため、腐朽は進みにくくなります。

とはいえ、現実的に空気を完全に遮断するのは難しいものです。

それに「水中に沈めておく」とか「土中においておく」 というのは、活用という観点から見ると「なんだかなぁ…」と思ってしまいます。

オレ、土掘って埋めておこうか?

でもそれじゃあ、せっかくの木材を使えないよね

なんだかナ〜

④菌に栄養源を与えない

木材腐朽菌は、糖やアミノ酸などの “栄養” がまわりに多いと元気になります。

だから、それらが多く含まれる辺材を避けたり、地面や腐材と接しないようにすることが大切です。

さらに(これらはあまり現実的ではないです)

  • 木材の中にある“腐りやすい成分”を、熱で変質させてしまう「熱処理」

  • 木の細胞の中までフェノール樹脂を染み込ませてガードする「樹脂処理」

といった技術も“栄養を与えない”工夫のひとつです。

⑤高耐久材を使う

木材には、木材ごとに“抽出成分”という、香りや性質を決めるエッセンスのようなものが含まれています。

なかでもヒノキやヒバのような木には、腐朽菌の成長を抑える、ちょっとした自衛力のような “抽出成分” がそなわっていて、自然のままでもけっこうがんばってくれます。

こうした木は“高耐久種”と呼ばれ、防腐処理をしなくても長く使えることが多く、頼もしい存在です。

そのため、こういった材種を選ぶというのも、腐りにくい木材活用という意味合いでは大切です。

オレ、ヒノキは森でよく見るぞ!

本当にヒノキはすごいんだよ(ヒバはもっと)

ただ、これって新しく使う場合の話ダロ?もう何かの木使ってる人には不向きな情報だゾ

ただし“高耐久”といっても、実際には、木の外側にある “辺材” にはその成分が少なかったり、個体差があったりと、完全とはいえません。

そしてもうひとつ、覚えておきたいことがあります。

それは、この “抽出成分” たちは、とてもデリケートなこと。

その多くは揮発性や水溶性が高く、つまり、時間がたつと、香りのように抜けていったり、雨で流れ出してしまったりします。

「はじめは強かったのに、知らないあいだに……」ということもあるので、そのあたりは注意です。

↑出典:木材学応用編(海青社)

⑥保存処理剤を使う

保存処理というのも、腐りやすい木を長持ちさせるための手段です。

この処理は、菌による腐朽と、シロアリによる食害の両方に対応するものが一般的です。

たとえば、防腐・防蟻剤を木の内部までしっかり浸透させる “加圧注入処理” という方法があります。

この処理を施された木材は、最低でもヒノキの心材の2倍以上の耐久性が得られるとされていて、適切な条件で使えば、それ以上の差が出ることもあるのです。

「辺材を含む材」や「もともと耐久性の低い樹種」を、少しでも安心して使いたいとき。

あるいは、「高耐久材」に、さらなる耐久性をもたせたいとき。

そんな場面で、保存処理はしっかり働いてくれる心強い手段になるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

アカデミックな内容に思えるかもしれませんが、意外と感覚とフィットする部分もあったのではないでしょうか。

腐ってしまっている木を想像したとき、「たしかに、あの要素がそろっていたかも」と思い当たる場面が浮かんだ方もいるかもしれません。

水が溜まりやすかったり、風通しが悪かったり、となりの古材がくっついていたり──

でも、そうしたすべての条件を整えて腐朽を防ぐというのは、実際にはなかなか難しいものです。

だからこそ、“高耐久材” のありがたみも見えてきます。

保存処理などがなかった昔、ヒノキやヒバが大切な部分に選ばれてきたのも、腑に落ちますね。

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この記事を書いた人

ユカワニ
ユカワニ

木が大好きな一級建築士。トリとイノシシと一緒に木の学びをお伝え。

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