
キツツキはなぜあんなに木を「つつく」のか——
SNSやTVで、木の幹にしがみついたキツツキが、一心不乱にくちばしを打ちつけている映像を見たことがある方も多いかと思います。
足腰もつらそうだし、口も頭も痛いだろうし、それに大した意味もなさそうなのに。
ストレスでも溜め込んでいるのか?
そんな一見「意味不明」だけれど、なぜか“素通り”もできない、気になる行動です。
今回は、そんな「キツツキがなぜ木をつつくのか」について、いろいろと辿ってみようと思います。








木をつつく3つの理由――採餌・巣作り・縄張り宣言
さて先に結論からお伝えすると、あの謎めいた行動には大きく3つの目的があるとされています。
それは、ごはんを探すこと、家を掘ること、そして、自分の存在を知らせること、です。
ひとつ目は採餌(さいじ)、つまり食事です。
外からは見えない場所ですが、樹皮の下には木を住まいにしている虫たちがひそんでいます。
キツツキはそこをくちばしで叩いて、獲物の居場所を探り当てているというわけです。
そして面白いのは、見つけたあとの手順のほう。
キツツキの舌はとても長く、先端はとげのような形をしていて、しかも粘着質。
それを木の中へ差し込んで、奥にいる虫を絡め取ります。
ピンセットと粘着テープを一本にまとめたような道具、と言えばイメージしやすいでしょうか。
ふたつ目は営巣(えいそう)、つまり巣穴を掘るためのつつきです。
こちらは食事ではなく、住まいづくりのための工事。
同じくちばしが、道具にも建築機材にもなっているわけですね。
そして三つ目が、「ドラミング」と呼ばれる高速連打。
これは食べるためでも掘るためでもなく、音を出すこと自体が目的です。
ここは自分の縄張りだと知らせたり、パートナーを呼んだり。
木を楽器がわりに使っている、と言ってもいいかもしれません。

つつく音も目的によってバラバラ|採餌音とドラミング音はどう違う?
さて、目的が3つあるということは、聞こえてくる音にも違いがあるということです。
虫を探しているときの音は、不規則で途切れがち。
コン……コン、コココン、と、あちこち探りながら叩いているような間があります。
一方、縄張りやパートナー探しのためのドラミングは、リズミカルな高速連打になります。
ドルルルル、と一気に鳴らして、少し休んで、また鳴らす。
同じキツツキの仕業でも、こちらは明らかに「聞かせるための音」。
このドラミング、繁殖期(おおむね春先から初夏にかけて)に増える傾向があるとされています。
ただし、具体的な時期は生息地域や種によって幅があるので、「何月になれば必ず聞こえる」とまでは言い切れないところ。
そのあたりは、季節の目安くらいに思っておくとよさそうです。

あれだけ激しく叩いて頭は大丈夫? |通説を覆した2022年の研究
ただ、どうしても心配になってしまうのが“キツツキの頭”です。
あんなに全力で叩いて、頭は無事なのか。
人間が同じことをやったら、パンチングドランカーになってしまいそうなものです。
長らく、キツツキの頭蓋骨には衝撃を吸収するクッションのような仕組みが備わっている、と考えられてきました。
天然のヘルメットを持っているから平気なのだ、という説明です。
ところが、話はそう単純ではないようです。
2022年、ベルギー・アントワープ大学の研究チームが高速度カメラでキツツキの頭部の動きを分析したところ、頭蓋骨には衝撃を和らげる仕組みはなく、頭部はむしろ硬いハンマーのように衝撃をそのまま受けていることがわかった、という研究があります。
クッションどころか、ハンマーそのもの。
なぜそんな作りになっているのか。その研究チームは、衝撃を吸収してしまうと木に穴を開ける力が弱まるためだと考えているそうです。
守りを固めるより、打つ力を優先した、ということですね。
では脳はどうなっているのかというと、キツツキの脳が無事なのは主に脳そのものが非常に小さいためだとする説を示しています。
小さいから、揺さぶられても壊れにくい。
痛くないのかと心配していた側からすると、なんとも肩透かしのような答えかもしれません。

まとめ
キツツキがつつく理由は、ごはんと、住まいと、音による自己主張。
探りながらの不規則な音なら食事中、リズミカルな連打なら誰かに向けたメッセージ。
そういう理解の元、あの行動は見ると“意味不明”ではなく、とても合理的なものにすら思えてきます。
大した意味もなさそうに見えたあの行動は、生きるための食事であり、家づくりであり、精いっぱいの自己紹介だったわけです。
もしどこかであの音を耳にしたときは、今なにをしているところなのか、少しだけ想像してみると面白いかもしれませんね。


