
真夏日に猛暑日、そして40度をこえるような「酷暑日(こくしょび)」。
令和の夏の暑さは、とどまるところを知りません。
そんな中でいま再び見直されているのが、すだれやよしずといった日除けの道具たち。電気代もかからず、手軽に使える。昔から受け継がれてきた日本人のエコな知恵が、現代の暮らしのなかで再注目されています。
しかし、どうでしょうか。
細く切り揃えられた植物が、規則正しく糸で編み込まれているあの形。どちらも同じような茶色で、いかにも涼しげな見た目。
だからこそ「あれ、すだれとよしず、どっちがどっちだっけ?」とふと疑問に思ったことはありませんか。
今回はそんな日常の小さなモヤモヤを晴らし、両者の決定的な違いから、どちらが自分に合っているかまでを説明していきます。












「すだれ」と「よしず」の決定的な2つの違い
それでは、さっそく結論から。
そっくりな見た目をしている2つですが、素材から使い勝手まで、よく知るといくつかの違いがあります。

違い①|素材の「太さ」と風合い(竹と葦)
まず、その素材の違いです。
すだれは主に「竹」を細く割って作られています。(もくめディアの別の記事でも竹の持つ力について触れましたが)竹のあの真っ直ぐでしなやかな性質がすだれには活かされているわけです。
※すだれでも「葦」や「樹脂」をつかうこともあります。
そして、一本一本が細いため、見た目も繊細で軽やか。
一方のよしずは、水辺に自生する「葦(アシ/ヨシ)」という植物の茎が材料です。
竹を割って作るすだれに対し、よしずは葦の茎をそのまま活かすため、一本一本が太く仕上がります。
少しゴツゴツとした自然な丸みが残り、野性味のあるどっしりとした風合いが特徴です。

↑葦(アシ/ヨシ)
違い②|素材の違いから生まれる「遮光性」と「風通し・目隠し」の度合い
この素材の太さの違いが、そのまま「密度」の違いに繋がっています。
よしずは一本一本が太く、すだれに比べて面としての存在感があるため、日差しをしっかり遮りやすいのが特徴です。外からの視線も和らげてくれるので、道路に面した窓や、強い西日が入る場所にも向いています。
一方で、すだれは細く割った竹を編んでいるため、よしずよりも軽やかに光や風を通してくれます。
違い③|設置方法が生む「空間の形」(吊るすか、立てかけるか)
もうひとつの大きな違いが、設置の仕方です。
すだれは、軒下や窓枠から垂直に「吊るして」使います。
窓に沿ってストンと下りるため、場所を取らずにスッキリとした空気の層を作ります。くるくると巻き上げることができるため、時間帯に合わせて日差しの入り具合を細かく調整できる、いわば天然のブラインドです。
それに対してよしずは、屋外から窓や壁に斜めに「立てかけて」使います。
窓との間に三角形の大きな空間ができるため、そこにたっぷりと日陰の空気を抱え込むことができます。
巻き上げての微調整はできませんが、大きな影をすっぽりと作り出す天然のシールドみたいな印象です。

↑よしずで涼む猫
どちらも「風を歓迎するフィルター」
素材の太さや空間の形に違いはありますが、細い植物を糸で繋いでいるあの構造には、共通する大切な役割があります。
先ほども触れましたが、それは「日差しと視線は遮るけれど、風は通す」ということです。
現代の遮光カーテンが、光も熱もシャットアウトする『面』だとしたら、すだれとよしずは、心地よい自然の恵みだけを選り分けて室内に届けてくれる優秀な『フィルター』です。
植物の隙間が熱を遮りながら、絶妙な風の通り道を作ってくれます。
さらに、特によしずで試してみてほしいのが「打ち水」の魔法です。
よしず全体に軽く水をかけておくと、水分が蒸発する時に周囲の熱を奪う「気化熱」が起こります。
そこを通り抜ける風が、まるで天然のクーラーのようにほんのりと涼しく感じられるのです。
ただし、濡れたまま放っておくとカビや傷みの原因になってしまうため、風通しの良い場所でしっかり乾かしながら使うのが、この裏技を長く楽しむコツです。

誰かに話したくなる?|すだれとよしずの「へぇ〜」な小話
仕組みがスッキリしたところで、せっかくなので少しだけ歴史の裏側を覗いてみましょう。
昔の道具には、だれかに話したくなるような面白いエピソードが隠れています。
アシは縁起が悪いから「ヨシ」になった?
よしずの材料である「葦」は、もともと「アシ」と読みます。
しかし、これが「悪し(悪い)」という言葉と同じ響きになってしまうため、昔の人は縁起を担ぎました。
悪いの反対だから「良し(ヨシ)」と呼ぼう。
そんな言葉遊びのような発想の転換から、「よしず」という名前が定着したと言われています。言葉の響きを大切にする、なんとも日本らしい粋な計らいです。
平安貴族の「すだれ」と、江戸庶民の「よしず」
すだれの歴史はとても古く、「簾(すだれ)」という言葉はあの万葉集にも登場するほどです。
平安時代になると、貴族の住まいでは「御簾(みす)」として、室内と外をゆるやかに隔てる上品な調度品として使われました。
顔を隠しながら外の気配を感じる、あの雅な世界を象徴する道具のひとつです。
時代が下って江戸時代になると、よしずの姿が記録に多く見られるようになります。
街道沿いの茶屋や水辺の休憩場所などで、旅人が強い日差しから逃れて一休みするための、庶民の暮らしに近い日除けとして重宝されました。
雅な空間を仕切るすだれと、屋外に大きな日陰をつくるよしず。
活躍する舞台の違いにも、それぞれの個性が表れていて面白いところです。
なぜ現代でも大活躍?見直されている圧倒的な効果
ノスタルジーだけでなく、現代の暮らしにおいてもこの2つが重宝されているのには、明確な理由があります。
それは、夏場に高くなりがちなエアコン代の節約につながるから。
部屋を涼しく保つために断熱材に頼るのが一般的ですが、もっと手前で大事なのが太陽の熱を「窓の外」で遮断することです。
室内のカーテンで日差しを防いでも、窓ガラスとカーテンの間に熱がこもってしまいますが、すだれやよしずを外に設置すれば、窓ガラス自体が熱くなるのを防げます。
エアコンの効きが格段に良くなるため、結果として電気代の節約にもつながります。昔の人の知恵は、現代の省エネにもしっかり通用するのです。

今の家に取り入れるならどっち?
それぞれの特徴が見えてきたところで、いざ自分の家に迎えるとしたらどちらが良いか。
狭いスペースを有効活用、室内でも使いたいなら「すだれ」
窓のサッシや軒先に、専用の金具やフックを取り付けられる場所があるなら、すだれが活躍します。
宙に浮いて垂直に下りる分、足元のスペースを邪魔しません。ベランダが狭い場合や、キッチンの小窓などにも最適です。
また、すだれは窓の外だけでなく、室内に取り付けてカーテン代わりに使うこともできます。
直射日光をやわらげながら、外の気配や風をほどよく取り入れたい場所には、すだれの方がなじみやすいかもしれません。

↑外の気配もわかりやすいすだれ
立てかける床がある、大きな日陰を作りたいなら「よしず」
賃庭や広めのベランダがあり、強い日差しをしっかり防ぎたい場合は、よしずの出番です。
フックをかける場所がなくても、床にドンと置いて窓や壁に立てかけるだけなので、手軽に大きな日陰を作ることができます。
そして、よしずの現代ならではの使い方として、エアコンの室外機まわりの日除けにも活用できます。
※ただし、室外機の近くに置きすぎ、吹き出し口や吸い込み口をふさいでしまうと、かえって冷房効率が落ちる原因になります。使う場合は、室外機から少し離した位置に立てかけ、風の通り道をしっかり確保しながら、直射日光だけをやわらげるのがポイントです。

↑日陰をつくるよしず
6:メンテナンスとまとめ|どちらを選んでも、翌年も気持ちよく使うために
すだれもよしずも、天然の植物を使ったデリケートな道具です。
シーズンが終わって長期間使わないときは、天日干しでカラッと乾燥させてから、くるくると丸めて収納してあげましょう。
しっかり湿気を取り除いて保管することが、カビを防いで次の夏もまた気持ちよく使い続けるための大切なコツです。
さて、いかがでしたでしょうか。
この夏は、少しBack to Basic。古来からの上質なアナログ、すだれやよしずを取り入れてみてはどうでしょうか。



