街路樹とは?“ひとり10役”の意外な働きをまったり解説|よく見る木と選ばれる理由も

無意識にその脇を通り過ぎる“街路樹”。

ちょっとだけ意識を向けてみると、立派なクスノキ、春のサクラ、秋のイチョウ、時にはサルスベリといった小ぶりな木々など、街路樹はその道路に個性をつくっているのが分かります。

そんな無意識になるくらい「見ない日はない」街路樹ですが、その木々がいったい“どんな基準”で選ばれ、“どんな樹種”が適しているか、意外と考えたことは少ないかと思います。

そもそも街路樹とは何なのか?

どんな役割をもち、どんな種類の木が選ばれているのか?

今回は、そんな“街路樹”にスポットライトを当ててみたいと思います。

街路樹の役割漫画①|もくめディア
街路樹の役割漫画②|もくめディア
街路樹の役割漫画③|もくめディア
目次

街路樹とは?|街に植えられる木の役割と意味

普段はあまり気にとめない街路樹。

実はその役割はとても大きく、街を彩るだけの“お飾り”ではありません。

あえていうならば“道路の環境そのもの”。

たとえば、

・夏の暑さの緩和
・歩行者の日陰づくり
・排気ガスの吸収
・景観形成
・騒音緩和など

無意識の快適と安全を作ってくれている──それが街路樹なのです。

街路樹に求められる役割とは?

ここではそんな街路樹の役割について、少しまとめてみようかと思います。

参考にするのは、名古屋市のガイドライン。

その中では大きくは次の4つに分けて書かれています。

①景色をつくる|景観形成機能

  • 装飾:枝ぶりや姿の美しい木を植えて、通りの印象を整える。

  • 遮蔽:見せたくない施設や看板をやわらかく隠し、排ガスや視線から人を守る。

  • 統合:同じ木を並べることでリズムを生み、街並みに統一感をもたらす。

  • 調和:建物と道路のあいだに緑を置き、風景に自然となじませる。

排気ガスも緩和してくれる街路樹

↑排気ガスも緩和してくれる街路樹

②沿道の環境を整える|沿道環境保全機能

  • 騒音の緩和:枝葉が音を拡散・吸収して、うるささをやわらげる。

  • 暑さ寒さのやわらげ:枝葉の“天井(キャノピー)”が直射日光や気温差を和らげ、歩く人に心地よい環境をつくる。

日陰をつくる街路樹

↑日陰をつくる街路樹

③安全に走り・歩けるようにする|交通安全機能

  • 遮光:中央分離帯の樹木などが、対向車のヘッドライトのまぶしさを抑える。

  • 視線誘導:道の形に合わせた並木が、進む方向やカーブの位置を自然に伝える。

  • 交通分離:低木や生け垣が、歩行者や自転車を車の通行から分け、安全を保つ。

  • 目印(指標):特徴のある木が“ここだよ”というランドマークになる。

  • 衝撃緩和:万一のとき、密植した低木が衝撃を吸収し、車の飛び出しを防ぐ。

④もしもの備え|防災機能

  • 延焼防止:樹木に含まれる水分や葉の層が熱を遮り、火の勢いを弱めたり、火の粉の拡散を防いだりする。

どうでしょうか?

“ひとり2役”どころか、“ひとり10役”をこなしているのが街路樹だったのです。

都市部の街路樹イメージ

街路樹の種類|街でよく見られる代表的な木

街路樹とひと口に言っても、その種類はさまざまです。

ただ「見た目がきれいだから」選ばれているわけではありません。

実はそれぞれの木に、街路樹としての役割や理由があるのです。

その地域ならではの木が植えられていたり、街のイメージに合わせて選ばれていたり。

「街路樹=この木」という決まりはありませんが、街のあちこちでよく見かける代表的な木々を紹介します。

木の名前よく見られる道路環境特徴選ばれる理由
ケヤキ幹線道路・広い歩道大きく育ち、夏は緑陰、秋は紅葉成長が安定、枝ぶりが美しい
イチョウ幹線道路・駅前通り秋の黄葉が美しい都市環境に強く、病害虫が少ない
サクラ住宅街・公園通り春の花季節感と親しみやすさ
クスノキ幹線道路・公共施設周辺常緑で堂々とした樹形日陰をつくる、排気ガスに強い
トウカエデ市街地・商店街通りコンパクト、秋に紅葉剪定しやすく、景観が整う

↑ケヤキ並木

↑イチョウ並木

(ちなみに、秋のイチョウ並木といえば、足元に落ちる銀杏の匂いも風物詩。なぜあんなに匂うのかについては、銀杏はなぜ臭い?の記事でお話ししています)

↑サクラ並木

↑クスノキ並木

↑トウカエデ並木

街路樹の管理と剪定|安全と景観を保つために

見えないところで“まちの快適さ”を担っている街路樹ですが、忘れてはならないのが「それらをどうやって保守点検していくか」という視点です。

木々はまちへの影響が大きい反面、その管理を怠ると、倒木や電線との干渉、根による地面の盛り上がりなど、事故の原因になってしまうこともあります。

そうならないためにも「一度植えて終わり」ではなく、長く見守りつつ手を入れていくことが、街路樹がその使命をまっとうする上で重要となってきます。

各都市の街路樹に関するガイドラインを眺めていても、選定基準よりも、実はこちらの「管理基準」の方がボリュームが割かれている印象を受けます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

いつもは何気なく通り過ぎてしまう街路樹ですが、実は街の“お飾り”ではなく、ひとり10役のスーパープレーヤーだったのです。

さらに、その木々を丁寧に手入れをし、それを通してまちの環境を守る人たちがいる。

そう思うと、いつもの通り道にも少し感謝の念が湧いてくるのではないでしょうか。

おしまい絵
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この記事を書いた人

ユカワニ
ユカワニ

木が大好きな一級建築士。トリとイノシシと一緒に木の学びをお伝え。

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