
“世界一高い木”と聞いて、どれくらいの高さを想像するでしょうか?
ビル10階分の30mくらい?はたまた40mくらいでしょうか?
答えは、その“倍以上”です。
まさに私たちの想像をはるかに超える、規格外の巨木──
その名は“ハイペリオン”。
自由の女神よりも、ロンドンのビッグベンよりも高いその木は、ちゃんと地面から水を吸い上げ、呼吸をしている「生き物」です。
今回は、そんな生きる伝説、ハイペリオンについてのお話です。
その圧倒的なスケールや、Googleマップにも載っていない「場所が非公開」の理由など、ワクワクをたくさんお届けします。
世界一高い木“ハイペリオン”
2006年、アメリカのカリフォルニア州で、ある一本の木が“世界一高い”と認定されました。
その名は、ハイペリオン。
名前の由来は、ギリシャ神話の巨神から。
その高さ、なんと約116メートル(発見時115.92メートル)。
そうは言われても、数字だけだと少しイメージしにくいですよね。
たとえば、ニューヨークの“自由の女神”は台座を含めて約93メートルです。
日本にあるもので例えるなら、大阪のランドマーク通天閣で108m。
それよりも高いと言えば、その異常さが伝わるでしょうか。
(見上げるような35階建てのタワーマンションと同じくらいの高さです。)
驚くべきは、そんな通天閣や、タワーマンションの最上階と同じ高さまで、ただの「植物」として水を吸い上げ立っているのです。


↑ハイペリオンのイメージ
樹齢は推定600年〜800年
高さもさることながら、その生きてきた時間も壮大です。
ハイペリオンの樹齢は、およそ600年から800年と推定されています。
ハイペリオンは見つけられない?|場所が「秘密」にされている理由
そんなすごい木なら、一生に一度は見てみたいと思うのが人情というもの。
しかし残念ながら、私たちはハイペリオンに会いに行くことはできません。
場所はアメリカ・カリフォルニア州の「レッドウッド国立公園」の中にある、とまでは分かっています。
しかし、そこから先の具体的な場所は「極秘」事項。
一切公表されていないのです。
当然、Googleマップで検索してもピンは立ちませんし、公園内の地図にも載っていません。
道なき道の奥深くに大きく佇んでいるイメージです。
なぜ詳細な場所は「非公開」なのか?
では、なぜそんな「場所非公開」みたいなことになるのでしょうか。
観光地にすれば、世界中から多くの人が押し寄せ、観光収入でその公園も潤いそうなものです。
しかし、そうではありません。
むしろ、その考えこそが、「場所非公開」につながったのです。
これには、過去の苦い教訓があります。
かつて話題になった巨木に一目見ようと人が押し寄せ、足元の土が踏み固められてしまったことがありました。
レッドウッドの根は意外と浅く、土がかたくなると呼吸や水分吸収に支障をきたします。
その結果、木が弱ってしまい、高さを維持できなくなってしまった大木の例があったのです。
(厳密には「観光客による踏圧」だけでなく、「1964年の洪水による土砂堆積」や「嵐による先端損傷」も絡んだ複合的なものだそうですが)
そう、「場所非公開」はハイペリオンを同じ目に遭わせないため──
場所を知っているのは、発見者とごく一部のパークレンジャーだけ。
「人間には見つからないことで、守られる命がある」というのは、自然界のひとつの真理なのかもしれません。

↑レッドウッドのあつまる森
ハイペリオンは何の木?|ジャイアントセコイアやメタセコイアとの違い
さて、ここから少し「木の種類」のお話を。
ハイペリオンについて調べると、「セコイア」という言葉や、「世界一大きい木」という別の称号など、情報がいろいろと出てきます。
そのため、一度ここを整理してみようかと思います。
まず、ハイペリオンは「セコイアメスギ」。
次に「世界一大きい木」という称号をもつ「シャーマン将軍の木」は、「ジャイアントセコイア」。
そしてもうひとつ、聞き馴染みのあるセコイアとして「メタセコイア」がありますね。
実はこれらは、親戚同士ではありますが、明確に違う木です。
それぞれのキャラクターを見ていきましょう。
セコイアメスギ(レッドウッド)
先ほどもお伝えしましたが、ハイペリオンの正体は、「セコイアメスギ」という種類の木。
別名「レッドウッド」とも呼ばれ、その名の通り赤みを帯びた樹皮を持っています。
この木の特徴は、とにかく“上に”伸びること。
スタイル抜群のモデル体型といったイメージでしょうか。
そんなスリムで背が高いのが、この「セコイアメスギ(レッドウッド)」です。
「世界一大きい木」ジャイアントセコイア
一方で、「世界一大きい木」として有名なのは「シャーマン将軍の木」という巨木。
こちらは「ジャイアントセコイア」という種類です。
ハイペリオンが「高さ」の世界一なら、こちらは「体積(幹の太さ)」の世界一。
背の高さはハイペリオンに負けますが、幹の太さは圧倒的で、どっしりとしたレスラー体型です。
高さのレッドウッド(ハイペリオン)
太さのジャイアントセコイア(シャーマン将軍)
同じセコイアの名を持ちながら、伸びる方向が違うのが面白いところです。

↑シャーマン将軍の木
なんだかよく聞くセコイア「メタセコイア」
そしてもうひとつ、日本の公園や学校でもよく見かけ、聞くのが「メタセコイア」。
この種は名前にこそ「セコイア」とついていますが、決定的な違いがあります。
ハイペリオンやジャイアントセコイアは「常緑樹」。
冬でも緑の葉をつけています。
対してメタセコイアは「落葉樹」。秋になると美しく紅葉し、冬には葉を落とします。
そんなメタセコイア、かつて絶滅した化石植物だと思われていましたが、中国で生きているのが発見され、「生きた化石」として世界中に広まったのも面白いところです。
(この話はまた別の記事で取り上げようと思います)

↑メタセコイアの並木
地上100mまで水をポンプアップしているのか?ハイペリオンの不思議
話をハイペリオンに戻しましょう。
その高さが規格外なのはご理解いただけたと思います。
しかし、よくよく考えてみると、その「生態」こそ不思議の最たるところではないでしょうか。
想像してみてください、100m以上の高さの木ということは「地面から100m以上も上空に水分をポンプアップしている」ということです。
それは、35階建てのタワーマンションの最上階まで、水を持ち上げる力です。
そんなことが果たして可能なのでしょうか。
残念ながら、流石にそこまでは困難なようです。
実際に、通常の木のポンプ機能だけでは、この高さまで水を送るのは物理的に限界があると言われています。
では、いったいどのようにして天空のような高さまで、水分を届けているのでしょうか?
霧を食べて生きている?
その秘密は、カリフォルニアの気候にあります。
この地域は、海から発生する濃い「霧」に覆われることが多い場所。
そう、ハイペリオンたちレッドウッドは、根から水を吸うだけでなく、上空の葉っぱから直接、霧の水分を吸収しているのです。
いわば、空中で水を飲んでいるようなもの。
この霧があるからこそ、空の高さまで枝を伸ばすことができたようです。

天敵はキツツキ
そんな巨大なハイペリオンにも、悩みがあります。
それは、キツツキです。
実はハイペリオンのてっぺん付近は、キツツキがつついて巣穴を開けたことで、損傷しはじめているとか。
植物学者たちの話では、キツツキの被害により、これ以上の成長は難しいかもしれないとも言われているほどです。
まさか、「ギリシャ神話の巨神」から名前を授かったハイペリオンの天敵が、小さな小さなキツツキだったとは。
どんな小さなことでも、油断してはならない──
そんな人間にも通ずる哲学のようにも思えてきますね。
まとめ:世界一の巨木に思いを馳せて
いかがだったでしょうか。
115メートルを超える高さで、誰にも知られない森の奥にあるハイペリオン。
残念ながら私たちがそこへ足を踏み入れることはできませんし、どこにあるかも分かりません。
しかし、世界のどこかに、100mを超える木が実在する⸻
その事実だけでも、まるで神話のような十分なロマンではないでしょうか。



