
木の特性は、樹種によってずいぶん違います。
重い木、かるい木⸻
硬い木、やわらかい木⸻
年輪のくっきりした木、そうでもない木⸻
そんな木のぜんぶを覚えるのは正直むずかしい。
だからまずは「ざっくりグループ分け」で考えてみるのが、木を理解する上で大きな助けになります。
たとえば動物でも、「この子は猫科だからしなやかに動く」「こっちは犬科だから仲間と一緒に行動することが多い」みたいに、“分類”で理解がすすみます。
木でいうところのそれが“広葉樹”と“針葉樹”という二つのグループ分けです。

この分け方を知るだけで、木の性格がちょっと見えてくる。
そして、どう使うか、使われるかも、ちょっと考えやすくなる。
今回はそんな広葉樹と針葉樹の違いについてみていきます。



↑今回参照にした書籍はコチラ
広葉樹と針葉樹の「見た目」「重さ・硬さ」の違い
それでは“広葉樹と針葉樹のちがい”について、まずは目に見える「葉っぱのカタチ」や「木の立ち姿(シルエット)」、そして実際に触れたときの「重さ・硬さ」といった、分かりやすい特徴から見ていきましょう。
「葉のカタチ」 のちがい
木を見分けるとき、まず目に入るのが「葉っぱ」のかたちです。
広葉樹──たとえばケヤキやカエデ、クスノキなどは、名前の通り、広くて平たい葉っぱをつけます。
いわゆる「木の葉っぱ」と聞いて思い浮かべるのが、だいたいこれです。

↑ケヤキの葉
一方の針葉樹──スギやヒノキ、マツの仲間たちは、葉っぱが細くてとがっていて、まるで針のようです。
種類によって、細長い一本葉だったり、短い葉が束になっていたり、見た目は少しずつちがいます。

↑スギの葉
もちろん、すべての木が「広葉樹=広い葉」「針葉樹=針の葉」ときれいに分かれるわけではありません。
たとえばイチョウ。
あの扇形の葉っぱを見たら誰もが「広葉樹」と思いそうですが、分類上は「針葉樹」に入ります。

↑イチョウの葉
つまり、葉っぱは「目安」にはなりますが、「絶対のルール」ではありません。
でも、木をグループ分けする最初の一歩としては、じゅうぶん使える視点です。
「木の立ち姿(シルエット)」の違い
広葉樹と針葉樹のちがいは、「葉っぱのカタチ」だけでなく「木の立ち姿(シルエット)」にも特徴があらわれます。
たとえば広葉樹。
枝はあちこちに伸び、曲線的で、自由な形をしています。
木全体がふんわりと広がって見えるのも、広葉樹らしさです。

一方の針葉樹はというと、スッとまっすぐ、空に向かって素直に伸びていくシルエットです。

こうした違いは、「木材としての使われ方」にもつながっていきます。古来から柱などの「まっすぐな材」に針葉樹がよく使われるのも、こういった理由です。
「重さ・硬さ」の違い
見た目の次に分かりやすいのが、木材になったときの「重さ」と「硬さ」の違いです。
一般的な傾向として、「広葉樹は重くて硬い」、「針葉樹は軽くてやわらかい」という特徴があります。
実際に持ってみると一目瞭然で、広葉樹のオークやケヤキはズッシリと重く、爪で押しても傷がつかないくらい頑丈です。
そのため、傷がつきにくく長持ちさせたい「家具」や「床材」にもよく選ばます。
対する針葉樹のスギやヒノキは、それに比べて軽くてやわらか。
加工がしやすく、触れるとじんわり温かみがあるため、足触りのいいフローリングや、優しい質感の子供用家具に向いています。
もちろんこれにも例外はあって、広葉樹なのにめちゃくちゃ軽くてやわらかい「キリ(桐)」のような木もありますが、基本的には「広葉樹=タフで頑丈」「針葉樹=軽やかでソフト」と覚えておくと、家具選びやDIYでとても役立ちます。

↑オーク材のビンテージ家具
広葉樹と針葉樹の(細胞レベルの)中身の違い
さて、葉っぱ、シルエット、重さや硬さなど、目に見える・触れる違いを紹介してきましたが、「なぜそんな違いが生まれるのか?」という本当の理由は、じつは木の「中身(細胞)」にあります。
木の断面を顕微鏡でのぞいてみると、びっしりと細胞が並んでいるのが見えてきます。
この「細胞の並び方や種類」が、広葉樹と針葉樹ではまったく異なるのです。
詰まり具合(密度)の違い
まず違うのが、細胞の「密度」です。
広葉樹は、細胞の種類が多く、構造も複雑。
それに加えて、細胞そのものの数も多く、中身がぎゅっとびっしり詰まっています。
だから「重くて硬い木」になりやすいのです。
いっぽう針葉樹は、細胞の種類も数も少なく、構造もシンプル
空気を多く含む隙間の多い構造(密度が低い)をしているため、「軽くてやわらかい木」になります。

↑針葉樹と広葉樹の細胞イメージ
細胞の種類(仮導管 vs 導管)の違い
また細胞の“種類”そのものにも、大きなちがいがあります。
針葉樹の場合、細胞の構成の約90%が「仮導管(かどうかん)」という細長いストロー状の細胞です。
この仮導管は、根から水を吸い上げながら、同時に木を支えるという、“二刀流”の役割をワンオペでこなしています。
シンプルなストローが綺麗に整列して集まったのが針葉樹、というイメージです。
一方で広葉樹には、この仮導管はありません。
そのかわりに、水の通り道専用の「導管(どうかん)」があり、さらにそれとは別に、木を支えるための「繊維細胞」や、栄養をやり取りする「柔細胞」など、それぞれの役割に特化した様々な細胞が入り混じって役割分担をしています。
しかも、広葉樹では、この細胞の組み合わせや構成比が樹種ごとに少しずつ違います。
この“つくりの多様さ”こそが、
・木目の模様の豊かさや個性
・部分ごとの硬さや手ざわりの違い
・加工時にクセが出やすいかどうか
といった“広葉樹らしい幅の広さ”につながっているのです。
【深掘り】広葉樹の多様性を決める「導管の並び方」
さらに広葉樹の複雑さと多様性を決定づけているのが、水の通り道である「導管の配列(並び方)」です。
広葉樹は、この導管が断面にどう並んでいるかによって、さらに大きく3つのグループに分類することができます。

環孔材(かんこうざい)
春先に作られる部分に、大きくて立派な導管が「年輪に沿って環状(リング状)」に綺麗に並ぶタイプです。年輪がくっきりと力強く出やすく、ダイナミックな木目が楽しめます。ケヤキやオーク(ナラ)、タモなどが代表的です。
散孔材(さんこうざい)
小さな導管が、年輪に関係なく全体に「まんべんなく散らばって」配置されるタイプです。木目がおだやかで主張しすぎず、手触りが均一でツルツルなめらかなのが特徴。カエデ(メープル)やブナ、サクラなどがこれにあたります。
放射孔材(ほうしゃこうざい) 導管が中心から外側(木の樹皮側)に向かって、炎や放射状のように連なって並ぶタイプです。カシなどがこれにあたります。
このように、針葉樹が「ほぼ仮導管だけの均一なつくり」であるのに対し、広葉樹は「導管の並び方」ひとつとってもこれだけ表情が変わります。
このつくりの多様さこそが、木目の豊かな個性や、加工したときの独特の手触りの違いを生み出しているのです。

↑オーク材(広葉樹)の木目
まとめ
「広葉樹と針葉樹のちがい」を、見た目から中身まで、少しずつたどってきました。
「葉っぱの違い」や「シルエットの違い」、そしてその根元にある「重さ・硬さの違い」──。
それらはすべて、顕微鏡でしか見えないような「細胞のつくりや並び方の違い」から生まれていたわけです。
中身の理由がわかると、「だから柱にはまっすぐな針葉樹なんだ」「だから傷つきにくい机には広葉樹なんだ」と、身の回りの木製品の使い道までカチッと繋がって見えてきませんか?
この分類は学術上の難しいお話に見えて、実は私たちの暮らしを選ぶときの、非常に有意義で実用的なガイドラインでもあったのです。

【今回の記事で参考にした書籍はコチラ】


