ドウダンツツジ|あの枝が絵になる理由と、名前になった昔の灯り

オシャレインテリアの代名詞、ドウダンツツジ。

アーティスティックな枝の形と、涼しげな緑、そして控えめな白いお花でおなじみの植物です。

ただ「ツツジ」と名がつくわりに、いわゆる「ツツジ」的な花を見た覚えはない──

これ、本当にツツジの仲間なのでしょうか?

そしてなぜ「枝」があそこまで美しい形状をしているのか?

今回はそんなドウダンツツジの素顔にせまってみたいと思います。

目次

ツツジと名乗るのに、あの派手な花じゃない

はじめに「本当にツツジの仲間なのか?」というポイントから。

ドウダンツツジは、たしかにツツジの一族(ツツジ科の木)です。

ただし、春の生垣をピンクや赤で埋めるおなじみのツツジやサツキは、そのなかの「ツツジ属」。

一方でドウダンツツジは、少し離れた「ドウダンツツジ属」という少し別の場所に立っています。

同じ科ではあっても、属が違う。

人間でいえば、いとこくらいの間柄でしょうか。

ツツジ属は世界におよそ800種。サツキやシャクナゲなど、作り出された園芸品種は数千にものぼります。

かたやドウダンツツジ属は、東アジアとヒマラヤにざっと10種ほど。日本に自生するのは6種だけ。

にぎやかな本家にくらべ、こちらはずいぶん人数の少ない一族なのです。

同じツツジの仲間でも、結構違うんだな。

にぎやかな本家と、静かな分家ってとこカ。

うつむいて咲く、白い小さなベル

お花の方は、ご存知の方も多いと思いますが、スズランを細くしたような、白い壺の形の小さな花です。

長さは7〜9ミリ。1センチにも届きません。

4月から5月、葉が出るのと前後して、枝先に1輪から5輪ほどが集まり、下を向いてぶら下がります。

見上げてながめる花ではなく、顔を近づけてのぞき込む花なのですね。

この白い小花が株いっぱいに散りばめられた姿を、昔の人は夜空にたとえました。

「満天星」という当て字がそれです。

枝を埋める白い点々を、満天の星に見立てたわけですね。

中国の道教の神さまが、天の上で薬を練っていたとき、こぼした霊水がこの木にかかって星のように輝いた——

そんな言い伝えになぞらえて語られることもあるそうです。

その真偽はさておき、白い花を星と見た人の目のつけどころには、うなずけるものがあります。

小さな白い花が、星空とは出世したモンダ。

満天の星ってロマンチックだなぁ。

春の白が、秋には燃える赤に変わる

では、この木は春にうつむく白い花を見せるだけの、控えめな性格なのでしょうか?

そうではないのが面白いところ。

花が散ったあとに、もう一つの見せ場が待っています。

それも、春とは正反対の色の。

秋、ドウダンツツジの葉は真っ赤に紅葉します。

しかもこの赤が、ただの赤ではありません。

ツツジ科のなかでも、ひときわ鮮やかに燃える赤色です。

色づく時期は土地によって幅があって、寒い地方では10月中旬から11月上旬ごろ。

暖かい地方では、11月中旬から12月中旬ごろ。

特に、寒い土地ほど赤が冴える、とされています。

春はうつむく白、秋は燃える赤。

同じ一本が、季節をまたいでまるで別の木のように姿を変える。

小さな体に、二つの顔を持っているのですね。

あの“涼しげな緑の枝”の正体

初夏にかけて、涼しげな緑の葉をつけた枝がお花屋さんなどに出回ります。

一本飾るだけで絵になる枝です。

考えてみると、ここまで「枝が主役」になる木も珍しいのではないでしょうか。

実はドウダンツツジの枝の美しさについても理由があります。

ドウダンツツジは、背の高さは1〜2メートルほどの、冬には葉を落とす低い木(落葉低木)。

その枝は、一つの枝先から3本〜5本に枝分かれして伸びます。

そして伸びた先でも、またそれぞれ3本〜5本に枝分かれをする。

ドウダンツツジは、これを繰り返して、こまかく密に茂った姿ができあがっていく木なのです。

そう、この「枝分かれぶり」こそが、アート性がにじむ枝の美しさの秘訣だったのです。

またこの枝分かれする性質は、生垣としての性格にももってこい。

枝分かれが多いと、刈り込みに強い。

だから落葉樹なのに、刈り込めば向こうが透けない壁になります。

庭や公園でよく見る、きちんと四角く刈られた緑の生垣。

これもまた、ドウダンツツジの一つの顔です。

同じ枝分かれが、アートにも壁にもなるんだな。

振り幅の広さは大したものだナ。

↑ドウダンツツジの生垣

枝ぶりに、昔の人は灯りを見た

この3本〜5本に分かれる枝の形を、じつは名前そのものが言い当てています。

「ドウダン」は、「灯台躑躅(とうだいつつじ)」が転じたもの、とされています。

ここでいう灯台は、海辺に立つあの灯台ではありません。

木や竹を3本交差させて結び、その上の台に灯明皿をのせた、昔の室内の灯り。「結び灯台」と呼ばれた道具です。

3本の脚で皿を支えるその形が、ドウダンツツジの伸びる枝ぶりとそっくりだったわけですね。

昔の人は、この枝に灯りの脚を見ていた一方で、いまの人は、同じ枝に夏の涼しさを見ています。

一本の枝ぶりが、時代をまたいで別のものに見立てられている。なかなか面白い木ですね。

昔の人の想像力はすごいな!

スマホに向き合ってない分、想像力も豊かだったのかもね。

まとめ

いかがでしたか、ドウダンツツジの素顔のお話。

  • ツツジ科だが、おなじみの派手なツツジ(ツツジ属)とは別の属のいとこ筋
  • 春は、スズランに似た白い小さなベルが、うつむいて咲く
  • 秋は、ツツジ科でもひときわ鮮やかな赤に紅葉する
  • 3〜5本に分かれる枝ぶりが、刈り込みに強い生垣と、夏の枝物をつくる

白い花、燃える赤、涼しげな緑の枝。

実は一本でいくつもの顔を持つ木だったのです。

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この記事を書いた人

ユカワニ
ユカワニ

木が大好きな一級建築士。トリとイノシシと一緒に木の学びをお伝え。

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